ジミーと大ちゃん
本当は、このタイトルの内容は完結してから公開するつもりだったが、途中までの話を公開する。
記憶の回帰とフラッシュバックにより書くのが難航した為だ。
話の抜けも多々あると思う。
長文の為、数話に分けてタイトルも付けた。
ホームから回顧録を順番に読まないと分かりづらいかもしれない。
第1話 大ちゃん
第2話 ジミー
第3話 ウスイケンジ警視正(仮名)
第4話 警察に求められる正しさ
第5話 不起訴処分
第6話 その後をざっくり
第7話 ジミー再び
第1話 大ちゃん
高校3年の時、隣の7組に大ちゃんと呼ばれる人間がいた。
ちなみに、僕は彼の名前を呼んだ事がない。
高校に入学してすぐに「どっちが番長やるか決めよう」という感じで喧嘩を売ってきた人間である。
パッと見の印象は、お好み焼き屋をやっていたK戸兄弟の兄の方に似てるなという印象だった。
一応言っておくが、当時の感覚でも番長は時代遅れである。
「サッカーしかする気ないので勝手にどうぞ」と言ってスルーした。
数日後に、隣のクラスから大ちゃんの話声が聞こえて来た。
大ちゃん「ああ、俺1年遅れて入学してるから、おまえらの1個上だぞ」
ん?こいつジミーじゃないよな?とは思ったが、ジミーにしては僕への態度がおかしいと、ひとまずスルーした。
ジミーに関しては、後述で詳しく語る。
高校3年になって嫌がらせが頻発した。
サッカーで知名度を上げてきたからである。
某野球選手が、預けてた金を全部取られたと告白した事があるが、そういった事を狙っているのは当時でも予想できた。
後、僕の場合は知識もね。
大ちゃんは、暴走族レッドサンズに所属し、騙す・ハメる・レイプするという事も聞いていたので、我慢の限界を超えて高3の時に教室の前の廊下で一度殺してる。
仲間からは、逆らわなくなった女を回してくれるとかで人気はあったようだ。
こいつが死ぬと、すぐに体育教師が駆けつけてきて、心肺蘇生を始めた。
体育教師を横目に、大ちゃんの頭を蹴飛ばし心肺蘇生を中断させた。
体育教師「何するんや?!!」
僕「おまえ、こいつがどういう奴か知ってるか?」
体育教師「知ってる」
僕「こいつのせいでまともな人間が苦しむ事になるなら、こいつが死んだ方がいいだろ?」
体育教師「いや、だからと言って・・・」
僕「こいつのせいで10人苦しむ人間が出るなら、こいつ1人を殺した方がいいだろ?それが俺の考え方だ。それでも蘇生する?これから出る被害者に対して、おまえ責任を取れんの?」
体育教師は、ヅラ校長の方を向き、強い声で問いかけた。
ヅラ校長とは、ローソンのバイトから出世して、広島県立安芸高校の校長になった人物である。
体育教師「どうしますか?!!!」
なんで、こんなに都合良く教員達がいるのかというと、何かを仕掛けてくる時は仲間が隠れて待機している集団ストーカー被害者にはお馴染みの手口である。
当時は、集団ストーカーなんて言葉もなかったが。
ヅラ校長「・・・」
僕「なんでこんな事になったのか。教育問題キッチリやろうや」
校長を見て僕はそう言った。
ヅラ校長「・・・」
僕「ローソンバイトが俺とやりあえるとも思えんけど、お互い責任持ってやろうや。お前校長なんだから」
そう言って僕は、自分の教室の席に戻った。
体育教師「どうしますか?!!!」
ヅラ校長「続けて・・・」
体育教師「心肺蘇生続けるって事でいいんですね?」
ヅラ校長「いい・・・」
体育教師は心肺蘇生を続けた。
体育教師「あっ、起きた」
心肺蘇生に成功したようである。
大ちゃんは体育教師が声をかける暇もなく、むくりと上半身を起こすと、猛ダッシュで僕の隣の教室の自分の教室に駆け込んだ。
周りが、唖然とする。
体育教師「まあ、大丈夫そう」
体育教師がそう言うと、教員達は職員室へ帰って行った。
数日の間、教員が様子を見に来たり、ひと悶着があったりはしたが、省略する。
体育教師「君、どうするつもりだったん?」
僕「どうもしない。普通に対応するだけ」
体育教師「・・・」
僕「マスコミ対応とかは、俺と校長でやるから教師の人らは気にしなくていいよ」
体育教師「いや、君、殺人だよ?」
僕「そうだね」
体育教師「いや・・・。君、殺人は犯罪だよ?分かってる?」
僕「分かってるよ。でも、なんでこうなったかの話はマスコミにしないといけないだろ?」
体育教師「それ、君がするの?」
僕「するよ」
体育教師「いや、犯罪犯したら話し合うとかじゃないよ?」
僕は体育教師をチラリと見て言った。
僕「あんた、俺がこいつらに何されてるか知ってるか?」
体育教師「いや、知らない」
僕は頷くように一呼吸した後、こう言った。
僕「話が通らないなら、また殺し合いを始めるだけだよ」
体育教師「・・・? また・・・?」
体育教師は、少し後退りをしながら横を向いた。
続けて、後ろで様子を見ているヅラ校長に言った。
僕「校長!また、始めるか?って伝えとけ」
ヅラ校長「・・・伝えとく・・・」
ヅラ校長は、顔色悪く静かにそう答えた。
そして、教員達は職員室へと帰って行った。
教員が帰って行った後、僕と同じクラスのデブのS田が隣の教室へ向かって行った。
大ちゃんの仲間である。
デブのS田「殺されてないんよね?」
大ちゃん「俺があんなのに殺されるか!」
ウチのクラスが、「どういう事?」という感じでザワつき始める。
僕「死んでたのに気づいてない」
周りが「ああ」という感じの反応をする。
僕「よくあるよ。死んだフリしてたのかどうか聞いてみ」
「ああ、そう聞けばいいのか」誰かが小声で言った。
隣の教室から、ザワッと大きな声が聞こえた。
大ちゃん「見るな!見るな!」
泣くような声で聞こえてくる。
ザワつく声を聞き取るとおしっこを漏らしたようだ。
しばらくザワついていたが、同じクラスの男生徒Kが話しかけてきた。
男生徒K「おまえ、なんでそんな普通なん?」
男生徒I「俺もそう思った」
僕「まあ、普通だな」
僕は伏し目がちにそう答えた。
男生徒K「普通じゃねーだろ」
畳み掛けるように質問してくる。
男生徒K「おまえ、人殺した事あるん?いや、今のじゃなくて。いや?今回?」
動揺しているようだ。
僕「あるな」
男生徒Kは、横を向いて一息ついた後、こちらを向き直し質問をしてくる。
男生徒K「何人ぐらい殺しとん?」
僕「覚えてない」
僕は強めにハッキリと言った。
男生徒K「覚えてないぐらい殺しとん?」
僕「覚えてないぐらい殺してる」
男生徒K「怖いんだけど・・・」
僕「だろうな」
教室は変な空気に包まれている。
僕と同じ中学だった奴らだけは、少し苛ついた様子を見せていた。
男生徒Kは、その空気を読み取ったようで「なんかおかしい」と感じているようだ。
男生徒K「おまえ、なんでそんな事言うん?」
僕「聞かれてるから」
男生徒「いや、そうじゃなくて」
僕「別に隠すような話じゃない。俺は自分に恥じるような事をしてる訳でもない」
男生徒K「なんで殺したん?」
僕「他に方法が無かったから」
男生徒K「まあ・・・、他に方法がないんならしょうがないで・・・」
男生徒Kは尻すぼみ気味にそう言った。
僕「じゃあ、おまえにも聞くけど」
男生徒K「何?」
僕「あいつらの被害に遭ってる奴はいっぱいおる」
男生徒K「ぉぉ」
僕「おまえがあいつらの被害者になっても、あいつを殺すのは問題あるって言えるん?」
男生徒K「いやっ、それは・・・」
男生徒Kは後ろに仰け反り横を向いた。
教室にいた人間も「ああ」という感じで落ち着きを取り戻したようだ。
女生徒K「あたしらは言えないわ」
女生徒の1人が呟くようにそう言った。
男生徒Kは、こちらの方を向きなおし何か言おうとしたが、男生徒Iがそれを遮って言った。
男生徒I「男生徒K、もうやめとけ」
男生徒K「いやっ、俺はこういうのはハッキリさせとかないと嫌なんだよ」
微妙な空気が教室を流れる。
僕「まあ、その考え方は正しい」
少しの間があった後、男生徒Kは質問を続けた。
男生徒K「他にも何かやっとる?」
僕「有名なのは広島県警本部爆破だな」
男生徒K「ん?ば・・・爆破?」
理解が追い付かないようだ。
僕「後、ヤクザの本部も爆破してるな」
男生徒K「え・・・?それは?なんか・・・軽くパンッみたいな感じ?」
僕「広島県警本部は、建て替えに何億だったか掛かってる。ヤクザの本部は知らんけど半壊してるな」
男生徒K「それマジの奴じゃん・・・」
男生徒Kは、なぜかちょっと興奮している。
男生徒K「え?ちょっと待って。それ、なんでニュースとかにならんのん?」
僕「おまえ、ニュースとか観てる?」
男生徒K「観てない」
教室に失笑がこぼれる。
男生徒K「それ、いつ頃の話?」
僕「小学生の頃」
男生徒K「どうやって爆破したん?」
手口を教えるのは、あまりよろしくないな。
僕「まあ、その辺の話はおまえらの親に聞けよ。みんな知ってる」
男生徒K「なんで親がしっとるん?」
僕「ニュースでやってるから皆知ってる」
男生徒Kは「ああ」という反応をし、質問を続けようとしたが、それを遮ってこう言った。
僕「まず、先に親に聞け」
めんどくさそうに言った。
男生徒K「おまえさっきハッキリさせた方がいいって・・・」
また、遮るようにこう言った。
僕「そっちの方が話が早いから、先に親に聞け。俺は超有名な奴だ」
男生徒Kは不満そうにはしていたが、帰って親に聞く事にしたようだ。
翌日、学校につくと教室から話声が聞こえてくる。
「あたしらの親もそんな子じゃないって言ってた」
「俺の親も同じ事言ってた」
「あたしら中学一緒じゃけど、みんな同じ事言ってたよ。小学校から同じ子らも同じ事言ってた」
「まあ・・・、そうだぞ。・・・というかコレ。嘘の噂流してる奴いるな」と思いながら何食わぬ顔で教室に入っていった。
席に着くと男生徒Kが話かけてきた。
男生徒K「おまえ、なんでそんなに普通なん?」
僕「あ゛?俺は普通だぞ?」
男生徒K「いや、そうじゃなくて・・・。普通でもないけど」
一呼吸置いて
男生徒K「親がそんな子じゃないって言ってたわ」
僕「ああ、俺はそんな子じゃないぞ。むしろ、まともすぎる奴だ」
その後も質問は続いたが割愛する。
この事件以降、大ちゃんは僕と揉めそうになる度におしっこを漏らして逃げるようになる。
3回ぐらいだったかな?おしっこ漏らして逃げたのは。
教室や廊下はトイレじゃないんだが・・・。
大ちゃん「ションベン漏らして逃げるように言われてる」
と仲間に言っていた。
最初に漏らしたのを誤魔化す為にやっていたようだ。
話は前後するが、
大ちゃん「俺は警察幹部になる事が決まってるから少々の事はいい」
と、仲間内に漏らしていたのを小耳に挿んだ事がある。
こっちのお漏らしの方が重大だと思うんだが、誤魔化さなくて大丈夫だったのか?
その時、お前のクラスの奴ドン引きしてたよな。
第2話 ジミー
大ちゃんには、1つ年上の腹違いの兄がいた。
通称ジミー。
小学生の頃、ジミー大西に似ていたので僕がつけたあだ名だ。
この2人が兄弟だった事を知るのは、十年以上先だが、同じく本人達も知らなかったようだ。
最初の接触は、小学生の時で、近所のお祭りに行っていた時だ。
お祭りに行くと、ジミーの母親が不信感丸出しに話かけてきた。
「道を知りたい」だの「引っ越してきたばっかりだから、この辺の事を知りたい」だの。
「それは小学生に聞く話じゃない」と散々つっぱねたが、執拗に話かけてきた。
結局「この子の友達を作りたい」の言葉に折れて少し話をした。
母子家庭でまだ仕事も決まってなく生活は厳しいとの事だったので、自分が食べていたタコ焼きをわけてあげる事にした。
屋台の人から、つまようじを2本もらってきて、「おかあさんと半分こし」と言って渡したが、ジミーが1人で食べた。
こいつは、がっつくように食べてたはいたが、腹が減ってるという感じではなく妙な違和感しかなかった。
食べ終わった後の態度も悪く「もっと持ってこい」とか言い出した。
イライラして立ち去ろうとすると、ジミーの母親に「友達になってくれる?」と言われたが「断る!」と立ち去った。
後日、スーパーの前を歩いていると、ジミーの母親がスーパーの中から出てきた。
たまたま、母子家庭手当の出るパートが見つかってココで働いていると言っていた。
「なんでワシにわざわざそんな話を?」と聞いたが「一応」みたいな返事が返ってきた。
後に知ることになるが、ヤクザもやっていたジミーの遺伝学上の父親が、そのスーパーの本社に手を回して母子家庭手当が付くようにしたらしい。
ジミーの2回目の接触もまた、お祭りの日だった。
ちょっと離れた所から、声が聞こえて来た。
ジミー「あっ、あいつだ」
ジミー「あいつ、あいつ、たこ焼きくれる奴」
誰かと話をしているようだ。
声の方を見ると、家の近所に住む2つ年上のW辺と幼馴染で1つ年上のT田がジミーと一緒にいた。
ジミー「おいっ、来いよ。こいつたこ焼きくれる奴」
W辺「おいっ、そいつは」
ジミーは足早にこちらに駆け寄ってきたが、W辺とT田はその場で立ち止まり、こちらを見ていた。
僕の前まで来ると、ジミーはこう言った。
ジミー「たこ焼きくれ」
パンッ!
殴った。
横っ面を殴ったので、ジミーは倒れこんだ。
W辺とT田は「あ~あ」という感じで、近寄らずに見ていた。
ジミーは倒れたまま、こちらを怒鳴りつける。
ジミー「何するんやおまえ!たこ焼きくれって言っただけだろ!」
僕「おまえに人の優しさを受ける資格はない」
ジミーが起き上がり、僕に殴りかかってきた。
殴りかかってきた腕をガードし、頭を平手ではたいた。
パンッ。
ジミーが懲りずにまた殴りかかってくる。
ゴンッ。
さっきよりきつく頭上にゲンコツを入れた。
また、殴りかかってきたが、さっきよりかなりスローな動きだ。
ゲンコツはそれなりに強めに入れたので、心が折れかかってるようだ。
ゴッ!
容赦なくさっきのゲンコツより、きつくゲンコツを入れた。
ジミーは完全に沈黙した。
下を向いたまま、僕の目の前にただ立っている。
僕は、少しの間目の前に立ったまま睨みつけていたが、攻撃の意図なしと判断し、その場を立ち去った。
次の祭りの時に、たーくん率いる暴走族が「頼まれた」と襲ってきたが、返り討ちにした。
1985年頃、僕がTVで話した、糞ガキ殴ったら、次の祭りで暴走族が襲ってきたって話をザッと書くとこんな感じである。
その後、父親が警察だという事でマスコミも追及してくれたが、あの会見に出ていたのは本人ではない。
この辺の話は、まだ先にならないと分からなかった話だが書いておくと、警視正という立場を利用して身代わりをたてたらしい。
ジミーと大ちゃんの遺伝学上の父親、ウスイケンジ警視正(当時&仮名)。
山口組本部のヤクザも兼任していて、自称史上最年少警視総監とヤクザのパイプ役もやっていた奴である。
ちなみに、権力者の兼任は違法である。
今考えると、自分は警察だと言って信頼させて、ジミーや大ちゃんの母親に子供産ませてたんだから、そりゃTVに出れないよね。
他に何人子供がいるのかとか、他の悪事は、とかもありそうだけど。
さて、話を小学生時代のジミーの話に戻します。
学校の休憩時間に担任が僕の所へ来た。
幼馴染のT田の所で何かあったらしいから行ってくれと言われた。
1学年、上の階に行った。
T田の所に行くと「俺じゃない」と言われた。
T田と同じクラスの奴から「コイツ余計な事ばっかりするから、どうにかしてくれ」と言われた。
ん?と思って見るとジミーがソコにいた。
僕「おまえ何かやってんの?」
ジミー「何もやってねえよ」
ジミーをしばらく見て
僕「お前、ジミー大西に似てるな」
と、言うと、ジミーは口を開けて???という顔をしていた。
僕「おい、ジミー」
ジミー「ジミーって誰?」
僕「おまえ」
ジミー「俺の名前はジミーじゃねえよ!」
ジミーは怒っているが、僕は全く気に留めずに話を続けた。
僕「ジミーちゃん何かやってんの?」
ジミーを見たまま無言の圧力をかけた。
ジミー「やってる!やってるぅ~!」
当時のジミー大西の流行りギャグである。
教室からワッというような笑いのような歓声が上がる。
ジミーはウケた事に少し気分を良くしているようだ。
僕は少しため息をつき、こう言った。
僕「しょうがないのぅ。ジミーちゃんは・・・」
そう言い残して自分の教室へ戻った。
戻る途中、ジミーの少し落とした声が聞こえてきた。
ジミー「やってる。やってるぅ~。」
なんだ?
練習してんのか?
気にはなったが、そのまま教室に戻った。
次の日、また学校の休憩時間に担任の先生がきた。
担任「〇〇君が、また、何かしてるみたいだから行って」
僕「誰?」
担任「ほら、昨日の、T田君の・・・」
僕「ああ、それ、たぶんジミーじゃ」
階段の方からワッという声が聞こえた。
他の教員達が隠れて聞いていたようだ。
僕が階段の方へ向かうと、階段の下の方から教員達の隠れるような音が聞こえたが、そのまま階段を上がりジミーの教室へ向かった。
教室へ着くと、ジミーが待ち構えたように、こちらを見てる。
僕「ジミーちゃん、またやってんの?」
ジミー「俺の名前はジミーじゃねえ!ちゃんと〇〇って名前があるんだ!」
少し、間を置いて
僕「で。ジミーちゃん、また!何か!やっ!てん!の!?」
語気を強めに、ジミーに圧力をかけるように言った。
ジミー「やってる!やってるぅ~!」
教室から笑い声が洩れる。
僕は深いため息をつき、そのまま自分の教室へと戻った。
次の日に、また担任が僕の所へ来た。
担任「〇〇君の様子見に行って」
僕「誰?」
担任「あんたがジミーって呼んでる子!」
僕「ああ、ジミーか」
というと、教室から
男生徒H「もう、名前覚えてやれよ~」
女生徒S「そろそろね」
といった声が聞こえてきた。
僕「あいつの名前に興味がない」
と言ってジミーの教室に向かった。
自分の教室から
男生徒H「コイツはなんて言うか~」
女生徒S「う~ん、独特?」
と、話をしているようだ。
担任「どうすれば名前覚えると思う?」
と教室にいる奴らに聞いていたが、興味がなかったので、そのままジミーの教室へ。
教室に近づくとジミーが何か言われているようだ。
ジミーのクラスメイト「ジミーちゃんまたやってんの?」
ジミー「俺の名前はジミーじゃない。〇〇って名前がちゃんとある。」
なるほど。
こんな感じになってるのか。
うーん。
ジミーが大袈裟に被害者ぶってる感じはあるなとソレが最初に感じた印象だった。
しばらく、ジミーの教室の近くで考えたが、「まあ、いっか」と自分の教室に引き返す事にした。
引き返している途中で担任に遭遇。
自分の教室に戻りながら、話をした。
担任「どうだった?」
僕「ああ、あれは放っといていい」
担任「あれはイジメじゃないの?」
僕「イジメかどうかは分からんが、どっちにしろ自業自得の範囲でしかない」
担任「アレでいいの?」
僕「えんじゃない?そもそも、余計な事せんかったらええだけじゃろ」
担任「余計な事してなかったら?」
僕「えんじゃない?元々そういう事やってた奴じゃろ。自業自得じゃ。何の問題もない」
担任は少し考えていたが、その間に自分の教室に着いた。
男生徒H「おまえ、どうだったん?」
僕「どうじゃったって言われてものぅ・・・。まあ、えんじゃないとしか・・・」
男生徒H「○○がイジメられてるって聞いたで」
僕「誰?」
男生徒H「おまえがジミーって呼んでる奴!」
教室から笑いがこぼれる。
僕「ああ、アレはイジメられとるかどうか微妙じゃぞ」
男生徒H[そうなん?」
僕「うん・・・。どうもきな臭い」
担任「とりあえず、名前ぐらいは覚えてあげたら?」
僕「え?ジミーで良くない?分かるじゃん?」
担任「良くない!あんただって友達に名前覚えられてなかったら嫌でしょ?」
僕「友達?!冗談じゃない!」
僕は声を荒げてそう言った。
僕「あんな奴と友達と思われるんなら、絶対覚えとうない!ワシはああいう奴が大っ嫌いなんじゃ!死ねばいいと思っとる!」
怒りをあらわにし、自分の席についた。
男生徒H「それだったら、無理だぞ」
ん?
この友達に名前って話は、こいつの入れ知恵か?
その時、一瞬そう思った。
まあ、何にせよ、こいつら全員繋がってて、ジミーとつるませようとしてるなと、そう感じた。
女生徒S「なんでそんなに嫌いなん?」
僕「あいつ、たぶん騙してハメる奴じゃぞ」
女生徒S「なんでそんなの分かるん?」
僕「おまえら何でそんなに言ってくるん?」
男生徒H「頼まれた」
女生徒S「頼まれた」
僕「誰に?」
2人共言い渋っている
男生徒Hは、思い立ったかのように
男生徒H「言っても分からん」
僕「それ、先生じゃないって事じゃろ?」
男生徒H[ああ、ぁぁ・・・・ぁぁ」
女生徒S「先生じゃないよ」
僕「やっぱりそうじゃよな」
女生徒「どういう事?」
僕「おまえらに言っとるのと先生に言っとるのとジミーが繋がってるって事」
男生徒Hと女生徒Sは、クソッという感じで顔を斜め下へ向けた。
男生徒H「そういう事か!・・・協力したくない!」
女生徒S「あたしも・・・・」
担任の先生は、何かアタフタしていた。
どうすればいいのか分からなかったようだ。
その数日後、また、担任が休憩時間にやってきた。
担任「坂本君がジミーって呼んでる子、転校するって」
名前覚えさす事は諦めたようだ。
僕「ああ、そう」
と返した。
担任「あんた、いいの?」
僕「え?なんで?平和になるんならええんじゃないの?」
担任「あんた、そういうの気にするかと思ったけど・・・」
僕「相手による」
僕は露骨に嫌気のさした顔をしてそう答えた。
その後、ジミーが転校したと担任から聞いた。
しばらくして、朝、学校に行くと、ジミーが待ち構えていた。
ジミー「おい!」
僕は、何の反応もせずに通り過ぎようとした。
ジミー「おい!」
スタスタスタ
ジミー「おい!ちょっと待てって」
ジミーが僕の肩を掴もうと寄って来た。
僕がジミーの方を向いて殴ろうとすると、ジミーは少し距離を取った。
ジミー「おい!俺はおまえのせいで転校したんで」
僕「おるじゃん」
ジミー「戻ってきたんだよ!」
僕「なんで?」
ジミー「おまえ、俺がおまえのせいで転校したのに何とも思ってないだろ?」
僕「人のせいにすんな」
ジミー「おまえ、俺がおまえのせいで転校したって言ってるんだぞ!」
僕「人のせいにすんな」
ジミー「・・・」
ジミー「おまえが俺をジミーって呼ぶから転校したんだぞ」
僕「じゃあ、なんで戻ってきたん?」
ジミー「・・・」
集団登校で一緒に登校してた幼馴染のT田が口を挟んだ。
T田「転校してない・・・」
パンッ
ジミーの横っ面を殴った。
ジミーは倒れこんで、こっちを見る。
ジミー「何するんや?!」
僕「パンチ」
踵を返し、僕は下駄箱に向かった。
集団登校で一緒に登校してた近所に住むW辺が、ジミーに笑いながら近寄り
W辺「こいつはこういう奴だ!」
と言った。
W辺も余計な事ばかりする奴で、僕に良く殴られていたので良く知っている。
このぐらいなら手加減してくれるので大して痛くない事も。
T田とW辺はジミーと話をしている。
W辺はなにやら、うれしそうだ。
同じような仲間が出来たような感覚なのだろうか?
僕の方には、担任が走って寄って来た。
担任「坂本君、あれは駄目なんじゃない?」
僕「何が?」
担任「いや、殴ったら」
僕は一息ついて言った。
僕「騙す奴との会話とか無意味じゃ」
担任「いや、そうかもしれんけど・・・」
僕「手加減はちゃんとしとるぞ」
担任「いや、話し合いとか・・・」
僕「それは先生がやって。先生が話し合いで解決してくれるなら、ワシも殴らんで済む。ワシは殴る」
担任「社会に出たらどうするん?」
僕「社会ではどうしとんじゃ?まず、それを教えて」
担任「いや、だから、話し合い?」
呆れたように言った。
僕「それは全く無意味じゃ・・・」
担任「いや、それでも話し合いをせんと」
僕「話し合いだけで済むんじゃったら、アメリカは核なんて持たんよ」
職員室から、こちらの様子を見ている集団がいた。
先生が粘ると思った。
ん?
なんか知らん奴らがおるな。
その時、そう思ったのは覚えている。
気にせずに、下駄箱で靴を履き替え教室へ向かった。
この後、同じクラスの女生徒Sが転校した。
女生徒Sの友達だった奴から、女生徒Sが転校後、僕に手紙を出したとか聞いたが、僕の元へは届いていない。
この時は良く分からなかったが、今思うとジミーの遺伝学上の父親ウスイ警視正(仮名)が何かやっていたと思われる。
恐らく、僕に対して何かする事を拒否していたからだと思われる。
しばらくして、家に電話がかかってきて、電話を取った親から「○○の所へ行ってって」と言われた。
こういう電話はチョコチョコあったが、詳細については、今回は省略する。
僕「誰?」
母「M君の友達とこって」
M君とは僕の幼馴染のT田Mである。
幼馴染なので、僕も親も下の名前で呼んでいた。
「ジミーだろうな」とは思ったが、僕はあえてW辺の家へ向かった。
家が近所な事もあり、すぐ着いたが別段変わった様子はない。
僕は、玄関の前で叫んだ。
僕「W~な~べ~」
ダダダダダダッ
あれ?
普通にいるのか?
階段をダッシュで降りてくる音が聞こえた。
そういえば、以前コイツが家に逃げ込んだ時、玄関破壊して入った事があったな。
慌てて階段を下りてくる音を聞いて思い出した。
W辺が玄関のドアを開けた。
W辺「何?」
僕「あれ?お前なんかしとらん?」
W辺「なんもしとらん」
僕「あれ?なんじゃろう」
どう見ても何もしてなさそう。
W辺もこちらを見て、こいつ何か間違えたなという感じで笑ってる。
同い年のW辺の妹が出てきた。
W辺妹「お兄ちゃん、今日何もしてないよ」
僕「あ、そう。ん?なんじゃろう?間違えたっぽい?」
W辺「たぶん、そうだぞ」
W辺妹「たぶん、そう」
僕「ああ、そう。悪かったの」
と言って、僕は家に帰った。
家に帰ってしばらくすると、電話がかかってきた。
「どこ行ってた」だの「探した」だの言われたが、「今日はもういい」との事だった。
当時は携帯電話等なかった為、人を捕まえるのが簡単ではなかった。
以前も行く道の途中で猫と遭遇して、猫と遊んでそのまま帰った事がある。
もちろん、故意である。
得たいの知れないコイツラの呼び出しには不信感しかなかったからである。
翌週に、また呼び出される事になる。
それ迄の期間にジミーが自分の名前を僕に向かって言っていたようだが、興味がなかった。
日曜日になり、「また呼び出されるな」と思ったので早々に出かけた。
家に帰ると「どこ行っとたん?」と親に聞かれたので、「やっぱ呼び出しの電話があったな」と思った。
翌日、小学校の帰り道に、学校近くにある交番の前を通ると、警察官Tに呼び止められ、交番の中に呼び込まれた。
交番の中に入ると、そこに勤務する警察官ではなく、スピーカー状態の電話越しにどこの誰とも分からない人物と話す事になった。
後に、ジミーの父親であるウスイケンジ警視正(仮名)と判明する。
ウスイ「おまえどこ行ってた?」
僕「学校」
ウスイはフーッと息をつくと、こう続けた。
ウスイ「そうじゃない。日曜日だ」
僕「普通に遊びに」
ウスイ「おまえ、電話がかかってくる事分かってただろ?」
僕「なんじゃ?この国は遊びに行く自由もないのか?」
ウスイはなぜか笑ってたが、
ウスイ「分かってたって事な」
と言ってきた。
僕「・・・」
ウスイ「分かっててなんでいなかった?」
僕「分かってたとは言ってない」
ウスイ「!?」
僕「その電話してくる奴は、ワシに予定を伝えとるんか?」
ウスイ「いや」
ウスイは少し笑ったようだ。
僕「じゃあ、分かりようがない」
ウスイ「おまえ、そんな反抗的な態度だと問題あるぞ」
僕「事実を言ってるだけなのに、反抗的な態度とはどういう意味じゃ?」
この頃は、以前に小学校の同じクラスで給食費が盗まれる事件が発生した後で、警察にあまりいい印象を持っていなかった。
ざっくり話すと盗んだ犯人を見つけて、学校から叫んで近くの交番の警察官を呼んで解決したのだが、その後交番に呼ばれて「余計な事をするな」と怒られた話である。
当時は給食費を現金で集めていてクラスの1人が管理していたが、この事件以降、給食費は振込になる。
この話は、機会があれば語る事とする。
ウスイ「まあ、いい。それより、おまえなんで〇〇の名前覚えないんだ?」
僕「誰?」
ウスイ「T田の友達の」
僕「W辺か」
ウスイ「おまえが、ジミーって呼んでる奴だよ!」
電話の向こうで誰とも分からない奴が「いいんですか?」と言った。
ウスイ「話が進まん」
ウスイ「で、どうなんだ?」
僕「ジミーでえんじゃないか?」
ウスイ「なんでいいんだよ?」
僕「分かるじゃん」
ウスイ「分かればいいのか」
僕「分かればえんじゃないか?」
ウスイ「そんな呼び方してもいいのか?」
僕「ワシはあいつに特に用がない。あいつが余計な事しなければ特に呼ぶ必要もない」
電話の向こうが何やらザワついている。
電話の向こうから、誰とも分からない奴が「おまえちゃんと質問に答えろよ」と言ってきたが、ウスイが遮り
ウスイ「余計な事しなければいいって言いたいんだろ」
と言った。
僕「まあ、そう」
ウスイ「覚える気は無いのか?」
僕「特に用無いしの」
僕「なんでそんなに覚えさせたい?」
ウスイ「名前で呼ぶのが普通だからだろ」
僕「あだ名で呼ぶのも割かし普通じゃぞ」
ウスイ「他の奴と間違えたらどうするんだよ?」
ん?
僕「ジミーはアメリカとかの名前じゃろ。日本人の名前じゃない。どっちかというと間違えにくいと思うんじゃが?」
ウスイ「そうなのか?!」
と、ウスイは少し驚いたように声を大きくし周りの人間に聞いた。
「まあ、そう」という回答が返ってくると、ウスイは「うん、うん、うん」と少し頷くような声をだし
ウスイ「まあ、いいか」
と言った。
ん?
なんだ?
こいつ喜んでないか?
アメリカ人に憧れでもあるのか?
いや、おかしい。
日本人なら分かる話だ。
アメリカ人か?
警察は戸籍調査されて、日本人しかなれない事を知るのはもう少し後の話である。
なんらかの権力が働かない限りは・・・だが・・・。
電話の向こうで「親として黙ってられないとか言ってなかったか?」と誰かが言った。
ウスイ「いや、いい」
親?
僕「おまえジミーの父親なん?」
ウスイ「そうだよ」
僕「日本も国際的な社会になったもんだのぅ。ジミーあいつハーフなのか」
ウスイ「ああ、お前、さっきの話で俺がアメリカ人だと思ってるのか。俺は日本人だぞ」
僕「嘘つけ。日本人ならジミーが日本人の名前じゃない事ぐらい分かるわい」
明らかに、電話の向こうがザワついていた。
ウスイ「俺がアメリカ人って言ったら納得するのか?」
ウスイの声に曇りが見える。
僕「事実を聞いとるだけじゃ」
ウスイ「なら、俺は日本人だ」
僕「・・・」
僕「ところで、おまえの息子殴ったら、暴走族に襲われたんじゃが?」
ウスイ「それは俺は知らない」
僕「お前が頼んだんじゃないんか?」
ウスイ「頼んでない」
僕「おまえは頼んでないけど、おまえの息子殴ったら暴走族に襲わせる奴がいるって事でええんか?」
ウスイ「それでいい」
ウスイの言葉が端的になっている。
何か別の事を考えているようだ。
僕「それは、お前がアメリカ人だったとしたら関係はあるんか?」
ウスイ「日本人だって言ったろ」
僕「だったとしたらって言ったじゃろ。日本語はあんまり得意じゃないんか?」
ウスイは明らかにアメリカと絡められるのを嫌がっている。
ウスイ「関係あるってどういう意味だ」
僕「日本が戦争に負けたから好き勝手やっとるんか?って意味じゃな」
ウスイ「具体的には?」
僕「結婚もせず子供産ませて、その子供も好き勝手やっとる」
ウスイ「好き勝手やってるかどうかは知らない」
僕「それはワシが知っとる。悪い事やって怒られたら、暴走族が報復に来とるからのぅ。」
ウスイ「それを好き勝手やってるって言うのか」
僕「好き勝手やっとるじゃろ。普通は怖くて逆らえん」
ここで電話の向こうにいる誰か分からない男が口を挟んで来た。
XXX「おい、お前そいつら病院送りにしたって聞いたぞ。それはいいのか?」
僕「正当防衛じゃから問題ない」
XXX「過剰防衛ってのもあるけどな」
僕「小学生1人に、暴走族4人がバット持って襲ってきたから問題ない」
XXX「それで問題ないと思う理由はなんや?」
僕「手加減できる状況でもない」
ウスイ「逮捕も含めて対処を検討する」
ウスイのこの言葉に、電話の向こうがザワッとする。
が、これはこの場を誤魔化しただけだと分かるのは、TVでこの話を公表した後の話。
この時から、もっと先の話である。
僕「それはワシを襲って来た奴らって事でいいんじゃよな?」
ウスイ「いい」
話が一段落し、帰ろうとする僕をウスイが呼び止めた。
ウスイ「日曜日に連絡するからいろよ」
僕「覚えとったらの」
ウスイ「次の日曜なんだから覚えてるだろ」
僕「年のせいか物忘れが激しくてな」
ウスイ「お前、小学生だろ?」
僕「小学生はすぐ忘れるんじゃ」
ウスイ「いろよ」
僕「覚えとったらの」
僕は帰路についた。
第3話 ウスイケンジ警視正(仮名)
日曜日になると電話がかかってきて、母親に「あんたに電話」と言われた。
忘れてた!
電話に出ると案の定ウスイだった。
ウスイ「お前いたのか。出かけるのかと思ってたわ」
僕は呟くようにこう言った。
僕「ワシが出かけた時の準備もしとたって事か」
「コイツ・・・」という雰囲気の後、一呼吸を置いてウスイは言った。
ウスイ「してたよ」
外から「撤収~」と大きな声が聞こえて来た。
ザワザワと人の声も聞こえる。
これは逃げても無駄だと分からす為に、わざと聞こえるように言っとるなと思った。
それにしても連絡が早い。
どうやっとるんじゃ?
これかなり人員割いとるじゃろ。
固定電話に張り付き・連絡の中継・足止め実行部隊ぐらいか?
なんでここまでやるんじゃ?
当時は、携帯電話等無かった為、簡単には連絡等取れなかった。
僕「で、なんの用じゃ?」
ウスイ「ジミーのとこへ行ってくれ」
結局、コレなんか。
僕「分かった・・・」
渋々返事をすると、ジミーの所へ行く事にした。
行く途中にも、各家の上階からこちらの様子を伺ってる人間が何人かいた。
見張られてるどうこうよりも、「これから何があるんじゃ?」とそっちの方が気になってしょうがなかった。
ジミーの家近くまで行くと、家の前にジミーがいた。
ジミーはこちらの方をチラリと見ると家の中に入っていった。
さて、帰るか。
ジミーの家に背を向けると、女の子が僕の前に出てきた。
この辺に住んでる1個下の女の子だ。
なんか斜めを向いている。
女の子「〇〇君とこ行って・・・」
僕「誰?」
女の子の目が泳ぐ。
女の子「ジミーって誰?」
ん?
女の子の頬に手を添え、斜めに向いていた顔をこちらの方へ向かせた。
なんか耳からコードが出ている。
僕「お前無線しとるじゃろう?!」
僕が歩いてきた方向の壁の向こうから笑い声が聞こえた。
女の子はハニカムように笑っている。
こいつら無線使ってたのか・・・。
僕「ちょっと無線貸してみ」
女の子「ダメ!」
女の子は笑いながらも、語気を強めて言った。
どうするか・・・。
僕「よし!なんかして遊ぼっか」
女の子は「え!」という顔でこっちを一瞬見たが
女の子「ダメ!あたしが怒られる!」
と言った。
女の子「いいから、ジミー?のとこ?行って!」
と言われ、渋々ジミーの家に行く事に。
お世辞にもいいアパートとは言えない。
ジミーの家に入ると、ジミーの母親とジミーの2人がいた。
この後、ジミーの母親と話をしたが、良く覚えてはいない。
ジミーの事で、説教っぽい話をしてたと思う。
その都度、その都度、馬鹿馬鹿しい言い訳を入れてくるジミーに腹が立ち殴った。
ジミーは、怒りの表情を出したが、そのまま奥の部屋に入って行った。
僕「あの部屋は?」
ジミー母に、ジミーが入って行った部屋の事を聞いた。
ジミー母「あの子の部屋」
僕「あいつ自分の部屋あるのか」
ジミー母「まあ、一応」
僕「おまえの部屋は?」
ジミー母「ない」
僕「どこで寝るん?」
ジミー母「ここ」
ジミー母は、今いる居間を指さした。
そんな感じなのかと思い、ジミーの部屋に向かった。
ジミーの部屋に入ろうとすると、すんなりとドアが開いた。
僕「あれ?鍵がかかってない」
ジミー母「鍵とかないよ」
僕「ああ、そういえば、ワシの部屋にも鍵とかなかったわ」
ジミー母はクスクスと笑った。
ジミーが怒りの剣幕で部屋に逃げ込んだので、ドアが開かないようにされてると思い込んだ勘違いである。
ジミーの部屋に入ると、まずTVが目に付いた。
僕は、TVを観て言葉を覚えたぐらいの生粋のTVっ子である。
広島に住んでるから広島弁と思われがちだったが、言葉のベースは時代劇である。
僕「なんでおまえの部屋にTV?」
ジミー「俺の部屋にTVがあったら駄目なんか?」
僕「普通は家族で観れるように居間に置くもんじゃろ」
ジミー母「もらったTVだけど、その子が持って行って観してくれんのんよ」
僕「おまえなんでそんななんじゃ?」
ジミー母「もう、それはいい」
ジミー母は、しんどそうにそう言った。
ジミー「いいって言ってるだろ」
僕「良くはないじゃろ。昼ドラとかは結構楽しいらしいぞ」
ジミー母「ああ、なんか聞くね」
ジミー母は、思い出したように言った。
ジミーは黙ってこっちを見ている。
僕「とりあえず、TVは居間に移動するか」
そう言って僕はTVの方に近づき、TVのスイッチを入れた。
ジミー「やめろ!」
黙って見ていたジミーが突然叫んだ。
僕「あれ?映らない」
TVはザーッと音を出して、ノイズを映し出した。
僕「なんで?なんで、映らないTVをおまえの部屋に置いとるんじゃ?」
ジミー「・・・。騙されたと思ったんだよ」
僕「騙された?」
ジミー「・・・。騙されてゴミ渡されて喜んどるって思ったんだよ」
ジミー母「あんた、それであたしに全然見せんかったんね」
ジミー母はうれしそうに言った。
ジミー母「本当はこの子は優しい子なんよ!」
僕はそれには何も答えず、チャンネルの調整をしようとした。
僕「チャンネルの調整してないんじゃないんか?」
ジミーはニヤリと笑った。
チャンネルの調整ダイヤルをグルグル回してみたがやっぱり映らない。
ジミーは調整してる僕をニヤニヤしながら見ていたが、気づいていないフリをした。
ジミー母は、うれしそうにジミーを見ていた。
いつも周りからジミーの事でクレームを受けてばかりだったので、相当うれしかったのだろう。
アンテナか?
そう思いTVの後ろを見ると、アンテナが繋がってない。
僕「アンテナ繋がってないじゃん」
ジミー母「アンテナって何?」
僕「TVはアンテナ繋がんと映らんのじゃ」
ジミー「それで映らんのか」
ジミーは、真顔に戻っていてそう答えた。
何か引っかかる。
僕「おまえ、TV映らんのに、なんでジミー大西知っとるんじゃ?」
ジミー「友達の家で観た」
僕「なんの番組で?」
ジミー「なんの番組かは知らん」
ジミー大西は、小学生は家に帰ってる時間帯の、夜やってるお笑い番組ぐらいしか出てない。
不信感は抱いたが、こいつの観たって話を完全に否定できる物でも無かった。
まあ、なんにせよ、TV観れんのはかわいそうか。
僕「アンテナ繋げば観れるかもしれんぞ。壊れてなければじゃけど」
ジミー母「それ高い?」
僕「アンテナ引き込むのは大家がやる。おまえらにお金はかからん」
ジミー母「え?そうなん?」
僕「じゃけど、TVにアンテナ繋ぐのは、おまえらがやらんといけんけぇ、そこはお金かかるな」
ジミー母「どのぐらい?」
僕「知らんけど、5千円ぐらいじゃないか?電気屋に聞かんとわからん」
ジミー母が何か言おうとしたが、それを遮りジミーが言った。
ジミー「金はない」
ジミー母が「チョット」と言う顔でジミーの方を向いたが、
ジミー母「まあ、あんまり余裕はないよ」
と下を向き言った。
後に知る事となるが、ジミーは月に5千円の小遣いをもらっていた。
今だと普通かも知れないが、当時は小学4年生だから4百円とかが普通の時代である。
まあ、しょうがないか。
僕「父が繋げるのできるけぇ、次の日曜にでも頼んでやるよ」
ジミー母は「え?」という顔をしてたが、ジミーは目を丸くし笑いをこらえるような顔をしていた。
そして、ジミーの家を出ると、さっきの1つ年下の女の子が「遊んでくれるって言ったから待ってた」と外で待っていた。
「ああ、確かに言ったな」と思い、小学校の校庭に一緒に遊びに行った。
そして、次の日曜に父にアンテナを繋げてもらった。
めんどくさい事になるのが嫌だったので、一応口止めはした。
父と一緒にジミーの家を出たが、僕一人だけ途中で引き返しジミー家の様子を見に行った。
ジミー「だから、おまえは駄目なんだよ」
ジミー母「やってもらうんだから、それぐらいのお礼をするのが当たり前でしょ」
壁の薄いアパートなので、外からでも声が聞こえる。
ジミー母「お礼するのに買ったお菓子だったんよ。なんであんた1人で食べるん?」
ジミー「もう、食った」
そんな話が聞こえてきて、気分が悪くなった。
どうもおかしい。
こんな奴が、母親庇う為にTVが映らないの隠すか?
しばらく、監視してみるかと、学校帰りにジミーの家の様子を見に行く事にした。
監視に向かうと、翌日だったか翌々日だったかは忘れたが、かなり早いタイミングで結果が出た。
ジミー「パート行ってる」
ジミーの声が聞こえた。
母親はパートに行ってるようだ。
ジミーの声しか聞こえないし電話か。
ジミー「言われた通りにやった」
ん?
ジミー「ああ、喜んでた」
ジミー「TVが観れるようになったのはうれしい」
んん?
こいつ、母親ハメとるんか?
いくらなんでもそれは・・・。
ジミー「分かった」
ん?電話を終えたようだ。
今日は引き上げるか。
引き上げようとすると、アパートの別の部屋の電話が鳴った。
XXX「ええ、言われた通りやりましたよ」
ん?
こいつもジミーと同じ言葉を?
引き上げようとしたが、ジミーが家から出てきてもバレない位置へ移動し、その部屋の声を聞く事にした。
XXX「いえいえ、あんな物でよければ」
XXX「いや、大丈夫です。TVはちょうど買い替えようと思っとったとこですけぇ」
おい・・・。
XXX「ええ、あんなに喜んでもらえるとは思ってなかったんで」
XXX「はい。はい。はい」
XXX「それじゃ、失礼しまーす」
電話終わったか。
ひきあげよう。
YYY「???」
良く聞きとれなかったが、部屋にもう1人いるのか。
まあ、引き上げよう。
XXX「ウスイさん」
え?
今、電話してきた奴の名前か?
これ、なんか、もしかして重要な話する?
引き上げを中止し、聞き耳を立てる事に。
なんか話してるけど、良く聞こえない。
どうやれば良く聞こえるんだ?
XXX「ん?」
あ、これバレた。
ガザガザしすぎた。
撤収。
XXXが家から出てきたので鉢合わせ。
XXX「あれ?君・・・」
XXXは、僕の顔を見るなりそう呟いた。
当然、ワシの顔は知っとるよのぅ・・・。
僕は素知らぬ顔で、XXXの方を向き「ん?」と反応し「たまたま通りがかっただけですよ」という表情をした。
XXX「君、ゆうくんって子じゃよね。何かしとった?」
XXXは少し険しい顔をしている。
僕「ああ、ちょっと遊んどったんじゃ。おじいちゃんは、こんなトコで何しとんじゃ?」
XXX「ワシはここの大家じゃから、ココに住んどる」
僕「ほうか」
大家か。
そう思うと同時ぐらいに、僕の声を聞きつけたジミーが家から出てきた。
ジミー「おまえ、何しとんや」
ジミーは僕の顔を見るなりそう言った。
僕「道を歩いとる」
そう言って歩を進めた。
ひとまず、この場を脱出したかった。
僕「おじいちゃんも大変じゃのう。こんな悪ガキがアパートに住み着いて」
僕は歩きながらそう言った。
大家「まあ、多少は悪さもするかもしれんが、子供は皆こんなもんじゃよ」
こんなもんであってたまるかと思ったが、
僕「ほうかぁ~?」
と、当たり障りのない言葉に切り替えた。
ジミー「こんなもんだよ。おまえが真面目すぎるんだ」
こいつ、煽ってくるな・・・。
僕は進行方向を向いたまま
僕「よし!おまえ!死ね!」
と言い残して、立ち去った。
翌日、ウスイ警視正から電話がかかってきた。
会話の内容はあまり思い出せないが、「良く聞こえなかった」と言うと、誤魔化すつもりだと思ったのだろう。
自分からある程度バラした上で、「家庭の事情に首を突っ込むな」とか、「こうした方が上手く行く」だとか、「親の育て方に口を出すな」とか、要するにバラすなと言ってきた。
僕「判断がつかんから様子見る」
ウスイ「それは言う事もあるって事だよな?」
僕「まあ、あるかも知れんの」
ウスイ「おまえ・・・」
僕はウスイの言葉を遮り言った。
僕「ただ、前にも言ったんじゃが、儂はジミーに興味がない。こっちから関わりたいとも思っとらんし、関わらなければ話をする事もない」
ウスイ「おまえ、何かあったら来る奴じゃないか」
僕「余計な事せんかったらええだけじゃろ」
ウスイ「ああ・・・」
ウスイは何やら考えてるようだ。
というかコイツ、TVもらう所から息子が部屋に逃げ込む所まで周り全員グルで騙されてるなんて、ワシが言えると思っとるんか。
こんな事が分からないなんて、間違いなくコイツ、クズじゃな。
と思ったが、言わなかった。
僕を利用するのに、TVを選んでる事からして、自分の事を調べられてると感じたからである。
当時は、高度成長期にはあったが、まだそこまで裕福と言える時代ではなかった。
誰かの家に行くと、良く「ウチの家ぼろいじゃろ」と言われた。
まだ、古い家がたくさんあったからである。
その時返してたのが、「家なんて屋根とTVがあれば十分じゃないか」と返していた。
それを言うとTVの無い家庭だと、だいたい、その家の父親と話す事になるのだが、父親はTVを高級品と考えてる事が多かった。
その父親が子供の頃は、庶民には到底手の届く物ではなかったからである。
真空管TVからブラウン管TVになる事で、価格が1/10以下に。
そこに、量産化・薄利多売方式等が加わり、安いTVなら1万ちょい出せば買えるようになっていた。
その説明をした後に、「ワシの知識は、ほとんどTVからじゃぞ」と言うと、みんなTVを買いに行った。
どこまで調べられとるんじゃ?
父がアンテナの同軸ケーブルを弄れるようになったのは、ワシが生後3か月頃の話じゃぞ。
どこかで話したか?
父が何処かで話した可能性もあるか。
そもそも、コイツラがそれは知らなった可能性も・・・。
分からないな・・・。
そんな事を考えてる間に、
ウスイ「まあいい」
と言って電話を切った。
悪い予感しかしなかったが、どうする事も出来なかった。
数日後に、誰とも知らない奴から「アンテナ繋げてほしい」とかいう電話がかかってきた。
父は「別にそれぐらい」と言っていたが、僕が断った。
その後も、何人かに「アンテナ繋げてほしい」と言われたが、全部僕が断った。
やっぱりこんなパターンか。
以前にも、こんなパターンの事をやられたなと思ったのは覚えているが、何をやられたのかは覚えてない。
タイミングからして、情報源はジミーのトコだな。
ジミーの家に行き問い詰めると、ジミー母が「聞かれたので」という回答だった。
「いい加減にしろよ」と怒りをぶつけてたが、ジミー母は何か薄ら笑いだった。
ジミーには「おまえ、こんな事しないとウチになんか来ないだろ」とか「おまえが来たからアンテナ取付代、得をした」みたいな事を言われた覚えがある。
殴るか
と思って、ジミーを殴っていると、ジミー母に「この子は本当はいい子なんよ。あんた知ってるでしょ」とか言われた。
「知らない」と言って殴っていたが、これだけじゃマズイかと「おまえにとってはいい子なのかもしれんが、ワシにとってはいい子じゃない」と付け足した。
ジミーの家を出ると、大家がいた。
大家「そういう事すると、こういう事される」
この声聞き覚えがある。
こいつアンテナ繋げてほしいって電話してきた奴じゃないか!
バンッと左頬を殴った。
僕「おまえがやっとるんじゃないか!」
大家は倒れこんだまま
大家「言えって頼まれたんじゃ!」
と言った。
アイツか・・・。
ウスイだという事は分かったが、連絡の取り方も分からないので、待つしかないなと思った。
第4話 警察に求められる正しさ
翌日、学校帰りに交番の前を通ると、中に呼び込まれた。
交番の中には、ここの交番勤務の警察官Tと警察官Oの2人がいた。
交番に入ると、すでに電話がスピーカー状態にされていて、そこからウスイの声が聞こえて来た。
ウスイ「ジミーの所に行ったのか?」
突然聞こえてくる電話からの声に僕はピクッと反応した。
電話がもう繋げてある・・・。
監視してるとでも言いたいのか?
僕「行ったぞ」
ウスイ「言ってないよな」
コイツ、知られたくないであろう話を、いきなりこんなストレートに聞いてくるのか・・・。
この時、僕は恐らく目を丸くしていただろうと思うが、すぐに平静を装い
僕「儂はジミーの父親じゃないからの」
と言った。
話が分からない人間には、「叱らなかった」って意味か?と誤解される言葉を選んだ。
交番にいる警察官が少し考えこんでるのを見て、「やっぱり知らないのか」と思った。
それと同時に、電話越しでも分かるぐらいウスイがご満悦になっているのをハッキリと感じた。
ウスイ「ならいい」
僕「で、今日は何の用じゃ?その確認か?」
ここで交番にいた警察官Tが口を挟んできた。
警察官T「ちょっとちょっと待って。さっきの言ってないっていうのは?」
僕「ああ、人の家庭に口を出すなって言われとってな」
XXX「お前そんな事言ったのか?」
電話の向こうで誰とも分からない男が言った。
ウスイ「言ったよ」
これは嘘ではない。
XXX「なんでそんな事言ったんや?」
ウスイ「親だから」
警察官T「ふむふむ。言ってないって言ってたから、そうなのかなとは思ったけど」
ん?
言ってない?
行ってない・・・か?
いや、コイツは行っとる事知っとるじゃろ。
それで大家に「言えって頼まれた」と言わせたんか。
ワシが確実に「言ってない」と受け取るように。
大家には、聞かれた責任を取れとやらせた。
辻褄は合う。
だとすると、どう転んでも誤魔化す自信があったのか・・・。
こいつは不味いと感じた。
警察官T「いや、話の辻褄は合います」
ん?
誰と話してる?
無線?
別の所と無線で話をしてるようだ。
交番の中で、電話と無線が別々?
どういう状況だコレ。
警察官T「普段からそういう事やってる子なんで」
警察官T「ええ、ええ、知ってます」
警察官o「はい、僕も知ってます。この辺では結構有名な子で」
警察官o「え?どのくらい・・・?」
警察官T「みんな知ってる感じですね。いや、大人です」
警察官T「分かりました」
無線での話が終わったようで、こちらに話しかけてきた。
警察官T「あっ、大丈夫。話続けてもらっていい?」
僕「続けて・・・?この状況で・・・?」
僕は警察官Tを困惑した表情で見ながら言うと、ザワッと笑いが起こった。
「う~ん」と思ったが、話を続ける事に。
僕「で、今日は何の用じゃ?その確認か?」
僕が話が止められる前のセリフを全く同じように言うと、またザワッと笑いが起こった。
ウスイは笑いながら
ウスイ「その確認だ」
と言った。
僕「じゃあ、もう用はないの?」
状況がわからん。
話をしながら、状況を見極めてどうするか決めるつもりじゃったが、いきなり切り出されて誤魔化した。
これは、たぶん失策じゃろう・・・。
というか、コイツにやられたの・・・。
コイツが誤魔化す準備をしとったって事は、知られたくないって事じゃ。
そういえば、コイツ前に、暴走族に襲わせる奴がいるって言っとったな。
いや、違う、クズはコイツじゃ。
じゃからといって、周りがクズではないという保証もないが。
駄目じゃコレ。
自分に言い訳探そうとしとる。
色々ありすぎて、考えが纏まらなかったが、今の自分の状態を認めると少し冷静になれた。
コイツに対してのカードとして持つというのはどうじゃ?
好きではないのぅ・・・。
好き嫌いの問題じゃないの。
こっちは調べ上げられとるが、ワシが知っとるのは、名前と母親をハメとる事だけ。
まあ、偽名の可能性は十分考えられるが・・・。
この状況で、バラし直すのもなんじゃし、カードとして持つ方が良さそうじゃな。
使わなくて済むなら、それはそれで良しじゃ。
ホンマ好きじゃないのぅ。
じゃが、相手によっては、やらざるをえん場合もあるしの。
ふむ、そうと決まればサッサと切り上げよ。
コイツも、あまりしたくない話じゃろうし。
ウスイ「いや、ある」
コイツ、まだ話を続けるつもりか・・・。
ウスイ「おまえなんですぐ殴るんだ?」
僕「そこにムカつく顔があったから」
電話の向こうから「山があったからみたいに言うな」と小声で突っ込みが入る。
ウスイ「ムカつく顔があったら殴るのか?」
僕「ムカつく顔があったら殴るな」
ウスイ「ムカつく顔があったら殴ってもいいのか?」
僕「ムカついてるならしょうがない」
ウスイ「おまえが殴られたらどう思うんだ?」
僕「内容による」
ウスイ「内容によってはおまえが殴られてもいいのか?」
僕「自分が悪いならしょうがない」
ウスイ「自分が悪いなら殴られてもいいのか?」
僕「ええよ。相手にもよるかもしれんが」
ウスイ「誰ならいいんだ?」
僕「普段からちゃんとしてる奴」
ウスイ「普段からちゃんとしてる奴になら殴られてもいいのか?」
僕「ええよ。自分が悪ければの」
ウスイ「なんでいいんだ?」
僕「そういう奴が殴りたくなるほど頭にきたって事じゃろ。じゃあ、しょうがない」
ウスイは「ふむ」と一息ついた。
ウスイ「おまえ話し合いしようとは思わないのか?」
僕「相手による」
ウスイ「どういう相手だ?」
僕「話が通じる奴」
ウスイ「話なんて皆通じるだろ」
僕「話が通じる奴は、余計な事なんてせんよ」
ウスイ「余計な事する奴は皆話が通じないのか?」
僕「ほとんどはの」
ウスイ「話が通じなければ殴っていいのか?」
僕「おまえも家畜と話はせんじゃろ?殴って教えるだけじゃ」
ウスイ「おまえは人の事を家畜と言うのか」
僕「例えじゃ。話が通じない相手と言う意味じゃな」
ウスイ「人間の事を家畜と例えていいのか?」
僕「ああ、例えが悪かったの。人に迷惑をかける獣じゃから害獣でええか?」
ウスイ「人の事を害獣と言っていいのか?」
僕「・・・うーん・・・・・・。合ってるな。害獣を否定するのは難しくないか?」
ウスイ「そうなのか?!」
ウスイは周りの人間に聞いたが、周りの人間は「いや~」「どうだろう?」という反応をしていた。
電話の向こうから、別の人間YYYが口を挟んできた。
YYY「獣は不味いんじゃないか?」
僕「じゃあ害人?」
YYY「それだと別の意味になるだろ」
僕「確か人と獣の違いは、理性が有るか無いかじゃなかったけ?」
YYY「ああ・・・なんかそんなのあったな」
僕「理性無くて話通じないから合ってるような気がするんじゃが・・・」
ウスイ「害獣でいいのか?」
ウスイは少し弱気に聞いてきた。
僕は力強く
僕「害獣で!」
と答えた。
ウスイは一息ついた後、こう言った。
ウスイ「お前話し合いをするつもりはないのか?」
僕「無駄じゃと思っとるからの」
ウスイ「話し合って分かってもらおうとは思わないのか?」
僕「それは父親の仕事じゃないか?」
ウスイは黙り込んだが、笑っているようにも思える。
誰とも分からないXXXが口を挟んできた。
XXX「お前、余計な事言いすぎなんじゃないのか?」
ウスイ「話の流れで言うしか無かった」
XXX「お前、コイツと手を組んでるんじゃないだろうな?」
ウスイ「組んでない」
手を組む?
誰じゃコイツ?
コイツラどういう関係じゃ?
敵対なんか?
いや、これはわざと聞かせてると考えるべきじゃろう。
そもそもココ交番内じゃぞ・・・。
ウスイに「チッ、しっかりしろよ」という感じで、XXXが口を挟んできた。
XXX「お前さっきから聞いてると調子に乗ってるみたいだけど」
僕「不良の人か?」
XXX「違う」
分からない人に書いとくと、昭和の不良の決まり文句である。
「コイツ・・・ホンマ・・・」と呟きながらXXXが話始めた。
XXX「おまえな。おまえ、自分が強いから殴ってるだけだろ」
僕「それはあるかもしれんの」
XXX「相手が自分より弱いから殴ってるんだろ?」
僕「相手が弱いっていうのは判断が難しいが、ワシは警察もヤクザも殴っとるよ」
XXX「え?」
警察官T「ああ、そうです。この子はそう」
警察官T「ええ、知ってます。知ってます」
警察官O「僕は警察は知りませんが、ヤクザは殴ってます」
無線から確認が入ったようだ。
場の空気が静まり返る。
XXX「おまえヤクザ殴ってどうしとるんや?」
プーッと笑い声が起こる。
まあ、知っとる奴は笑うよの。
知らない奴は、困惑するじゃろうが。
警察官T「後で説明します。はい」
警察官Tは無線に返事をしている。
XXX「ヤクザ殴ってるって言われるとなぁ」
XXX「まあいい」
独り言を呟いている?
XXX「おまえ何でそんな事するんだ?」
僕「そこに殴りたい顔があったから」
XXX「それはもういい。理由があるはずだろ?」
僕「理由はそれぞれじゃな。まあ、大抵は周りに迷惑かけとるとか、そんなんじゃが」
XXX「やっぱそういう奴だよなぁ。それが駄目なんだよ」
僕「駄目とは?」
XXX「おまえが助けてる奴は、おまえがいなくなったらどうする?」
僕「なるほど」
XXX「自分でどうにか出来るようにしないと駄目なんだよ」
僕「それは無理じゃないか?自分でどうにもならんから、やられとる訳じゃから」
XXX「それでも、自分でどうにかしないといけないんだよ」
僕「この世には、儂しか助けてくれる人間がおらんのか?」
XXX「居たとしても、そいつが助けてくれるかどうか分からないだろ?」
僕「ふむ。お前の話は分かった。じゃが、お前の言ってる事は無理難題じゃな。そんな事が皆できるなら苦労はせん」
XXX「でも、自分でやるしかないだろ?どうするんだよ?」
僕「じゃから、助けとるんじゃないか」
XXX「だから、それじゃあ駄目だと言ったろ?」
僕「お前はさっき儂に、相手が弱者だから殴っとるって言ったよの?」
XXX「言ったぞ」
僕「なんでそれを儂じゃあなく、本当に弱者をイジメてるだけの奴に言わんのじゃ?」
XXX「言っても無駄だろ」
僕「言っても無駄じゃから、悪事を働いてる奴は放置で、善行をしてる奴に言うのか?それならお前のやってる事は悪事でしかない」
XXX「だから俺らはちゃんとやったよ。やってきた結果そう言ってるんだよ」
僕「まあ、お前が何をやってきたか分からんから何とも言えんが、害獣止めるなら電気柵とか必要じゃぞ。話し合いなど愚の骨頂」
XXX「それがお前が殴る理由か」
僕「そうじゃな。シンプルで分かりやすい。獣にも理解できる」
XXX「じゃあ、弱い奴はどうする?」
僕「お前の話じゃと、弱い奴は自分でどうにかするって話じゃなかったか?」
XXX「・・・」
僕「弱い奴は自分でどうにかする。強い奴が助けてくれる場合もある。儂のやっとる事が間違っとるとは、とても思えんな」
警察官T「俺もそれでいいと思う」
警察官O「それ、何が駄目なんですか?」
XXXは、それには答えずに言った。
XXX「一つ聞いていいか?」
僕「駄目じゃ」
XXXは、そのまま話を続けた。
XXX「おまえは、なんでそういう事をやってんだ?理念・・・理念って言っても分からんか・・・」
僕「分かるぞ」
僕「儂の家に一匹のガリガリに痩せた猫が来たんじゃ。近所の家を一件一件周って玄関の前で鳴いとった。元々飼い猫じゃったんじゃろう。餌の取り方も分からず人間にもらうしか方法がないんじゃが、あまりの汚さに、皆病気になって捨てられたんじゃろうって言っとった。じゃから儂が餌をやった。餌をやっとると、隣のおばちゃんが洗ってくれての。見栄えがマシになると段々餌をくれる人が増えたみたいで、アバラが浮いとったのも回復していった。儂の顔を見てニャーって鳴いた時はうれしかったの。ここまで回復したかと。それまでは、餌ほしさに玄関の前だけでしか鳴かんかったし、毛繕いする体力も無かったみたいじゃからの。要するに儂が守りたいのは、そういう人の優しさじゃよ。1人動くだけで変わる事もある。ま、助けられたのは猫1匹じゃがの」
XXX「お前、自分がやったみたいに言ってるけど、チョット餌やっただけだろ」
僕「最初は冷蔵庫にあったハムとか牛乳とかやっとたんじゃよ。そしたら親にハムは高いから駄目とか言われての。冷蔵庫から猫が食べられそうのが無くなった。自分の小遣いでイリコを買ったんじゃが、すぐに無くなった。親の財布からお金を抜いて買ったんじゃが、すぐにバレてな。財布も隠された。TVで野良猫が飲食店のゴミを漁ってるのを思い出してな。あそこの中華飯店に、ガリガリに痩せた猫にあげたいから残飯くれと頼みに行った。まあ、その頃には、もう結構回復しとったが。自分の出来る事は全部やったつもりじゃ。それをチョットじゃと言うならチョットなんじゃろうよ。」
警察官T「いや、それはチョットじゃないと思うよ」
XXX[お前なんでそこまでしたんや?」
僕「お前それが分からない人間か」
沈黙が少し続いたがXXXが口を開いた。
XXX「お前はまだガキだから分からんだろうが、そういった人の優しさを利用しようとする奴もいるんだよ」
僕「それは知っとる」
XXX「どうするんだよ」
僕「じゃから、殴っとる」
XXXは沈黙した。
僕「儂の何が悪いのか分からんの。なんで儂は警察にこんな事言われとるんじゃ?」
警察官T「分からない」
警察官O「分からない」
ウスイが話かけてきた。
こいつらなんか交互に来るな。
ウスイ「お前ジミー殴るのどうにかならんのか?親として面白くない」
僕「別にお前を楽しませたい訳じゃない」
ウスイ「そういう事は言ってないだろ」
僕「無理じゃな。お前の息子をいちいち相手にするのはしんどい。殴った方が早い」
ウスイ「まず、話合えよ。語り合ったら分かる事があるかもしれないだろ?」
僕「なら問題ない。男は拳で語るんじゃ」
ウスイ「話合えよ」
僕「なんでそんなに話し合いをさせたいんじゃ?」
ウスイ「話し合いで解決するのが普通だと思ってるからだろ」
僕「話し合いで全部解決するなら、アメリカは核なんて持たんよ」
ウスイは黙った。
XXX「なんでアメリカ?」
僕「普通に例としては分かりやすいからじゃろ?」
んーん・・・。
ウスイはなんでこんなにアメリカに反応するんじゃ?
いくらなんでも過剰すぎる。
後に多重スパイと判明するが、まだまだ先の話である。
こうやって思い出して書き起こすと、当時は分からなかった事が色々分かる。
XXXの反応もおかしいと思ってはいたが、XXXはウスイが日系アメリカ人だって知ってたのか。
そして、それを知ってるのは宮家の関係者しかいない。
XXXはウスイのフォローをするように言って来た。
XXX「お前、ソイツがやらされてるかも、とか考えてないだろ?」
やらしてるのは、親のウスイなんじゃけどな。
ジミーと切り離して話をしないと、笑ってしまいそうじゃな。
僕「やらされてるって事は、それによって被害を受けてる人間がおるって事じゃろ?じゃあ、優先すべきはその被害者じゃな」
XXX「お前やらされてる人間がどんなか分かってないだろ?」
笑ってしまいそうじゃ。
僕「やらされてる人間がどんなかというよりは、それで被害を受けてる人間の方が先じゃな」
XXX「やらされてる人間はどうでもいいのか?」
僕「お前が最終被害者だったとして、自分に加害してくる相手がやらされてる人間かどうかは重要なんか?」
「重要じゃない」電話の向こうで誰かが言った。
また、ウスイに変わった。
ウスイ「お前、自分が正しいと思ってるよな?」
僕「まあ、今の所そう思う事が多いの」
ウスイ「お前の正しいは、全てにおいて正しいわけじゃないんだぞ」
僕「そうかもしれんし、そうじゃないかもしれん」
XXX「おい、おい、どっちだよ?」
僕「今言った通りじゃが?」
XXX「全てにおいて正しいと思ってるか、思ってないか、どっちかだろ?誤魔化さずに答えろよ」
僕「全てにおいて正しい場合もあるし、正しくない場合もある」
XXX「ハァ?詭弁か?」
僕「全てとは何を意味するんじゃ?」
XXX「全てって言ったら全てだろ」
僕「熊が他の動物を襲って食べるのは正しくないのか?」
XXX「プッ、馬鹿か。人間の話に決まってるだろ」
YYY「おいっ」
電話の向こうで、先程の割かし常識のありそうな男が暴言を諫めた。
僕は全く気にせず言った。
僕「じゃあ、戦場なら?人を殺すのは正しいのか?正しくないのか?」
XXX「日本の話だよっ!」
僕「まあ、日本も戦争やっとったが、それは置いといてじゃな。」
電話の向こうで少し笑い声が聞こえた。
僕「状況によるって話をしとる。全てなんて曖昧な話をされても、曖昧な答えしかできん」
XXX「分かってないなお前。あのな。全て正しいのなんて法律だけなんだよ。お前じゃない」
ああ、この答があるから、コイツこんなに強気なんか。
ウスイもこの答を共有してると。
やっぱり、コイツラ仲間じゃな。
じゃが、
僕「法律は全て正しいわけじゃないぞ。」
ザワザワ・・・。
場がカイジの如くザワつく。
僕「そもそも法律は解釈の違いとかあるじゃろ」
XXX「え?あるん?」
YYY「あるぞ」
僕「法律は、一定の基準?指標?どう言ったらいいのかは分からんが、基準とかにすぎん」
YYY「まあ、まあ、どっちでもいい」
僕「法律という基準に対して、物事を判断する為に、警察官という<人間>が配置されとるんじゃ」
YYY「裁判官とかもな」
僕「ああ、そうじゃな」
僕「警察官にしろ裁判官にしろ、法律という基準の元に最善を尽くしているだけで、法律は絶対的な正しさではない」
YYY「なるほど、なるほど」
XXX「・・・」
僕「ワシも同じで最善を尽くしてるだけじゃな。これが分からんと警察官は出来んぞ」
ザワザワ・・・ザワザワ・・・。
場がカイジの如く。
YYY「コイツは自分が良いことやってるだけと思ってる奴と違うな」
ZZZ「そうみたいですね」
電話の向こうで、複数人が何やら話し合いをしている。
XXX「俺が警察官とは言ってないけどな」
XXXは、気に入らないとばかりに言って来た。
何かにケチをつけたいのだろう。
僕「えっ?警察官じゃないんか?」
僕は、交番にいる警察官Tに聞いた。
警察官T「いや、警察って聞いてるけど・・・。」
場が異様な雰囲気に包まれている。
いたたまれなくなったのか、XXXが堰を切ったように言った。
XXX「具体的な話を言え!おまえの話は詭弁にしか聞こえん」
コイツ自分は具体的な話せん癖によく言えるの。
僕「まあ、ええじゃろう」
僕「人を殺せば刑罰を受ける。でも、それは本来割に合わない物じゃ。なんでか分かるか?」
質問しといて、答える間もなく続ける。
僕「死んだ人間は生き返らないからじゃ。どんな刑罰であれ被害者側からすれば割に合わない」
XXX「だから法は正しくないと?」
XXXは小馬鹿にしたように言った。
それには答えずに僕は話を続けた。
僕「じゃあなんで刑罰という物があるか分かるか?」
XXX「こいつ、話聞いてないな」
YYY「まあまあ」
僕は答えを待たずに話を続ける。
僕「被害者遺族とかの感情を抑える為、復讐とかで残った遺族とかの人生も潰させないようにする為じゃな」
YYY「ああ、そういう側面もあるよ」
XXX「それで?」
僕「アメリカで実際起こった事件じゃが、娘を殺された母親が法廷で犯人を射殺した事件がある」
YYY「ああ、あったな」
僕「母親は、どんな判決を受けてどんな刑罰を受けようと、納得ができないと起こした事件じゃな」
XXX「・・・」
僕「法は全てにおいて正しいわけじゃない」
YYY「うん、うん、なるほど」
XXXが神妙な面持ちで聞いてきた。
XXX「じゃあ、どうすればいい?」
この態度の変化は、言わされとる感じじゃな。
僕「お前にはどうにも出来んよ」
XXXがイラッとしたのが電話越しにも分かった。
やっぱこいつ言わされとるなと思ったが話を続けた。
僕「無論儂にも出来ん。そんな簡単な話なら完璧な法律がもう出来とる」
YYY「あはははは。そうだな。俺にも出来んわ」
電話の向こうでYYYに誰かが小声で囁いたようだが良く聞こえなかった。
YYY「完璧な物って言われると無理だわ」
ああ、と思い
僕「人間の作るものに完璧な物とか無いしの」
YYY「そうだなぁ」
僕「法律はガチガチにすると、今度は生きづらくなって別の問題が発生しそうじゃしの。ある程度、緩さを持って最善を尽くすのが最善手、としか言いようがない気がするのぅ」
XXX「緩さって何や?」
僕「日本の車は180km出せるように作られとるじゃろ?法定速度があるなら、その最高速度を超えないように作ればいい。でもそれをやっとらん。儂はこれはこの辺の話じゃないんか?と思っとる」
YYY「ああ・・・、それは、どうなんだろうなぁ・・・」
電話の向こうから「わからない」「わからない」と声が聞こえる。
XXX「逮捕できるじゃないか」
ZZZ「作れないように法規制すればいいって話」
「もう黙っとけ」と電話の向こうで誰かが小声で言った。
僕「もう、こんなもんでええかのう?」
YYY「そうだな。まあ、面白かったわ」
僕「ほうか」
YYY「お前、まだ小学生らしいな」
僕「うん」
YYY「親に教わったのか?」
僕「いや、TV。TV観て自分で考えとる。親はこんな感じじゃない」
YYY「どんな番組観てる?」
僕「どんな番組とかは特に無いのぅ。3歳までは外で遊ぶとか出来んかったけえ、ずっとTV観とったし」
YYY「こういう事考えるようになったのは?」
僕「全般のような気はするが、火曜サスペンス劇場とかかのぅ。何やったら殺されるとか分かるし」
YYY「あははは。分かるな」
僕「一応言っとくが、誤魔化しとる訳じゃないぞ。良く分からん」
YYY「分かった。さて、帰るか」
僕「じゃあの」
YYY「あはははは。じゃあの」
久々に大人と話をした気がした。
警察官Tが声を掛けてきた。
警察官T「じゃあ、今度はこっちで話いいかな?」
XXX「ちょっと待て。まだ、俺の話は終わってない」
XXXが勢い良く口を開いた。
僕「弱者から、見返りを取る方法の話か?」
XXXは勢い良く沈黙した。
やっぱりの。
ウスイ「おっ俺は何も知らない」
ウスイは酷く動揺した声で言った。
これは、殺意を孕んだ目で睨まれたか?
そのぐらい動揺しとるの。
XXX「何の話か分からない」
お前、そんだけ動揺しとって無理あるぞ・・・。
XXX「なんでそう思った」
恐らくコイツ、ウスイとの繋がりを疑っとるな。
ウスイは何の関係もないが。
つまり、コイツが関与しとって、ウスイはそれを知っとるって事じゃな。
僕「お前の話は、被害者の所の話を守ろうとしとるようにしか聞こえん。被害者から得る利得をって意味じゃが」
XXX「俺はそんな話をした覚えはないが?」
僕「それはお前の頭ではって話じゃな。話を全部纏めるとそうとしか聞こえんぞ」
XXX「お前が俺より頭良いって言ってるように聞こえるぞ」
僕「それで合っとる」
XXX「フーッ。あのなお前。IQって分かるか?俺はIQ130有るんだよ。お前に言ってもピンとこんだろうけどな」
僕「IQ180有る儂にはピンとこんな。それは頭良いんか?」
場がカイジ。
なんでIQの話なんじゃ?
儂にとって都合の良すぎる話の気がするが・・・。
色々遭って、都合の良い話は疑う癖が付いていた。
小学生の頃は知らなかったが、知能の尺度を図る上では普通に出てくる話ではある。
XXX「お前IQっていうのは、そういうんじゃねえんだよ。ちゃんとしたテストを受けた結果、分かるんだよ。」
ああ、子供のアレじゃと思っとるんか。
僕「学校でちゃんとしたテストを受けたんじゃが?最初は何のテストか教えてくれんかったが、テストの後、色々おかしいって職員室に呼ばれて色々聞かれたぞ」
警察官T「ちょっと待って下さい。聞いた事あります」
警察官Tが割って入った。
無線とも話をしているようだ。
警察官T「いえ、違います。別の所からです。はい」
警察官T「娘と同じ小学校なんで」
警察官T「ちょっと、IQの数字は分からないんですけど、同じ小学校に、すごい頭の良い子が1人居るって」
警察官T「アレ、君の事?」
僕「1人なら儂になる。小学校に確認した方が早いぞ。テスト受けたの小学校じゃし」
警察官O「それってどんぐらい頭良いん?」
僕「うーん。県に1人居るか居らんぐらい?まあ、居らん事の方が多いじゃろうが。おっちゃんの人生で儂より頭良い奴に会う事ないと思うぞ」
後日、IQ220の数学者と此処の交番で電話越しに話す事になり、この予想は外れる事となる。
「まあ、会ってはないな・・・」と、どうでも良い言い訳を自分にしたのを覚えている。
警察官O「うーん。そんなに頭良いのかぁ・・・」
警察官Oは、何やら少し自信を無くしたようだ。
僕「おっちゃん、上を見たらキリ無いぞ。下を見てもキリ無いが。儂じゃって、アインシュタインと比べると頭悪いしの」
警察官O「ああ・・・」
警察官Oは、何やら考えている。
警察官Oの事を、僕はおっちゃんと呼んでいたが、警察官Tの部下で警察官Tより若い。
僕「まず、目の前の事を、ちゃんとやって行くしか方法なんて無いぞ。その内、何かの才能が花開く事も有るかもしれんし」
警察官O「そんな事って有るん?」
僕「それは分からん。天才とかは興味持った物事にしか能力を発揮せんし。おっちゃんが何かに興味を持った時、才能が開花する可能性は0じゃあ無い」
警察官O「へー」
僕「まあ、目の前の事をちゃんとやって行く事じゃな」
警察官O「そうする」
XXX「もう、いいか?」
警察官T「あ、大丈夫です」
警察官Tは無線に確認し返事をした。
XXX「で、IQ180あったら分かるのか?」
僕「それだけじゃあ分からんな。儂がこういう事やっとると、被害者からなんでも良いから何か貰えって言われとってな」
XXX「じゃあ、お前それで何か貰ってるんだろ?」
僕「手料理作って貰っとる」
XXX「お前、自分が貰ってて、そういう事言うのか」
XXXの笑いを遮る様に、僕は語気を強めて言った。
僕「自分のほしい物を貰って何が悪いんじゃって言ってな。言ってる意味分かるか?」
XXX「・・・」
僕「食事って言うと高い物になるかも知れんから、手料理で、普段食べてる物で良いって言っとる。儂が助けとる人間には生活が苦しい者もおるしの。儂が更に被害者を追い込む道具として使われんように、そうしとる。分かるか?本来こういう事はしたくないんじゃ」
電話の向こうから「まあ、そのぐらいなら」とか「数百円ぐらい」とか言った声が聞こえて来た。
僕「一番問題なのは、儂の事じゃなくてな。絶対、過剰な要求しとる奴居るよの。ヤクザから言われたら、恐怖でそういう行動に出るのは不思議じゃない」
XXX「お前、今ヤクザって言ったじゃないか。ヤクザから言われてる話を何で俺に?」
僕「本人はヤクザじゃって言っとたけど、ヤクザじゃない奴じゃからじゃよ」
XXX「あ゛?本人がヤクザって言ってるならヤクザだろ?」
そうじゃろうの。
お前がヤクザって言わせとるんじゃから、そう言うよの。
でも、残念じゃったの。
僕「慣れてない奴にでもやらしたんか?ボロがボロボロ出とったぞ。明らかに人選ミスじゃな」
XXX「・・・」
どんなボロが出とるのかが分からんと、迂闊な事は言えんよの。
僕「まあ、こういう事は儂1人にやっても意味は無いよの。複数箇所でやる。組織的にやらんとな。ヤクザじゃあ無く、そういう事を組織的にやれる組織。どこの組織なんじゃろうのぅ?」
XXX「ああ、お前警察を疑ってるのか?警察はそういう事やる事もあるぞ。市民の安全を守る為にな」
随分、あっさり認めたな・・・。
当時は見当も付かなかったが、XXXは宮家から目を逸らさせる必要があった状況だったと思われる。
僕「弱者を追い込むのが、市民の安全に繋がるのか。興味深いな。どういう理屈じゃ?」
電話の向こうで何か話をしている。
しばらくして、XXXが口を開いた。
XXX「さっきの話に戻るが、人選ミスじゃない。敢えて、そういう人間を選んでる。」
なんじゃ?
さっきから、えらく簡単に認めるな・・・。
XXX「そういう人間じゃないと、お前の言う通り過剰になるからだ」
僕「そういう事なら人選は正しいのかもしれんの。じゃが、儂はそういう事をする必要が無いと言っとる」
XXX「自分に得がないと普通はやらないんだよ。皆お前みたいな訳じゃない」
僕「得を求める奴にやらせると、過剰になるんじゃないのか?」
XXX「じゃあ、誰にやらせれば良いんだ?」
僕「普通に人を助けようとする奴なんてナンボでも居るじゃろ。そいつらをサポートしてやればええじゃないか」
XXX「そういう奴は大抵弱いんだよ。お前みたいなのは稀だ」
ふむ、話としては分からんでもない。
じゃが、
XXX「納得出来たか?俺らはやってきた結果、こうやってるんだよ」
僕「納得なんて全く出来んの」
XXX「お前此処まで説明して分からないのか?」
僕「お前の話は、ただ助けようとしとる人間も弱者も見捨てとる」
XXX「だから、こうするのが一番被害が少ないんだよ」
僕はそのまま話を続ける。
僕「そして、自分達のコントロールし易い奴に、得を与えてコントロールしとるんじゃよな?」
XXX「ああ、そうだよ?」
僕「これを何て言うか知っとるか?支配って言うんじゃ。少なくとも、警察に求められとる正しさじゃあない」
ドワーッと大歓声が上がる。
こんなに聞いとったんか。
警察も納得出来んが、反論出来ずにやらされとったって事か。
- ・・。
これは支配その物じゃないか・・・。
この頃は、警察キャリア制度が始まったばかりで、警察内部も、かなりおかしくなっていたようだ。
XXX「じゃあ、どうしろって言うんだよ?!」
僕「とりあえず、被害者に何かを要求するのは止めじゃな。どう考えてもココはおかしい」
警察官T「俺もそう思う」
警察官O「そうそう」
XXX「それだけで良いのか?」
僕「いきなり言われても分からんの。とりあえず、被害者に追い打ちは止めんとな」
XXX「先に言っといてやるけど、お前が言ってるのは理想論だ。絶対に出来っこない」
僕「お前が邪魔するからか?」
XXX「なんで、そう思うんだ?」
僕「俺が邪魔するからと言ってるように聞こえたんじゃが?」
XXX「お前じゃ被害を止められないと思うから言ってんだよ」
僕「お前らが全員儂の指揮下に入れば出来るかもしれんぞ」
XXX「出来る訳ねーだろ」
僕「お前らの行動を逐一報告してもらう。お前、単独犯じゃあるまい」
XXX「俺は犯人じゃねーよ」
僕「必ず協力者がいるよの。じゃないと、こんな話は普通通らん」
ここで、XXXは一呼吸置き言った。
XXX「お前じゃ被害は止められない」
僕「被害全てを止めるのは無理じゃぞ」
XXX「お前じゃ止められない」
XXXは強い口調で言う。
後に、ヤクザに成り、止める事に成功するが今回は割愛する。
僕「全部を止められないとしても、大日本帝国に逆戻りするよりかはマシじゃな。儂らはもう戦争する気は無いぞ」
XXX「なんで大日本帝国?」
XXXは焦ったように言う。
なんじゃ?
僕「支配体制に逆戻りするという意味じゃが?」
XXX「ああ」
当時は、天皇支配は終わったと思っていたので、僕には全く見当が付いてなかった。
それにしてもコイツ、ちょこちょこ変な所で反応するのぅ・・・。
揚げ足取る所でも探しとるんか?
XXX「お前ちょっと言葉に気を付けろよ」
僕「言葉・・・?今更・・・?」
広島弁が偉そうじゃというのは良く言われた。
今更?
大日本帝国・・・?
怒りが頂点に達した・・・?
XXX「俺の話は終わりだ」
僕「お、おぅ・・・」
考えが纏まらない内に、XXXは話を打ち切った。
第5話 不起訴処分
警察官T「じゃあ、今度はこっちの話を」
と、僕に話しかけて来た。
警察官Tは、今まで繋げていた電話を切り、無線で話してた人達へ電話を繋げた。
AAA「長い間お疲れ様でした。大変だった所申し訳ないんですが、今度はこちらの話にお付き合い下さい」
警察に、こんな丁寧な挨拶をされた事等無かった。
僕「なんじゃ?英会話セットなら買わんぞ」
当時、英会話セットを高値で売りつける詐欺が横行してた。
AAA「英会話セット?」
僕「英会話セット高値で売りつけようとしとらんか?」
AAA「いやいや、私は警察ですから」
僕「ホンマか?儂、警察にこんな丁寧な挨拶された事無いぞ」
警察官T「警察だから大丈夫」
僕「ほうか」
AAA「いつもはどんな感じですか?」
僕「いつもは誰とも分からん奴から文句しか言われとらん」
AAA「あ、私、AAAと申します」
BBB「私はBBBです」
ちゃんと名前を名乗られたが、覚えていない。
僕「ほうか」
初めての事で戸惑っていると、警察官Tが僕の方を見ながら、「君も」という感じで少し顔を上げた。
僕「ああ、坂本裕史じゃ」
その後、個人情報を聞かれた。
そして、順番に質問にしたいという事で、まずジミーの父親との関係性を聞かれた。
まあ、普通に答えてるとAAAに言われた。
AAA「たぶん、分かってないね」
BBB「そうみたいですね」
僕「何を?」
AAA「君、今の状況分かってるかな?」
僕「それは本当に分かっとらんぞ!むしろ、それを説明してくれ!これ何なんじゃ?!」
常に冷静にいる事を心掛けてる僕も、この時ばかりは声が大きくなった。
AAA「たぶん、そうだろうなと思ったよ。まず、君はジミー君の父親に会った事があります」
?
いや、会った事なんて無いぞ。
アイツ母子家庭で、父親家に居った事ないじゃん。
AAA「君、昔焼き芋売るの手伝ってた事有るよね?」
僕「ああ、それはあるぞ。飛ぶように売れるから面白くてやってた。警察に止められたが」
家の前を焼き芋カーが通った時に、「面白そうじゃ」と強引に乗り込んだ事がある。
焼き芋カーのスピーカーで喋って遊んどったが、「遊ばせて貰うだけじゃ悪いから」と芋を売るのを手伝った。
それを警察に見つかって、「小学生は働いてはいけない、という法がある」と止められた奴じゃな。
AAA「その時、焼き芋売ってたのが、ジミー君の父親です」
僕「え?!」
理解が追い付かん。
益々、分からんくなったぞ。
AAA「どういう事か分かりますか?」
僕「分からん。借金で夜逃げしたけど、芋売りながらジミーの事見守っとるとか?」
AAA「違います」
僕「えぇぇ。ちょっと待って。何で儂は交番で芋売りのおっちゃんと話しとったんじゃ?」
警察官Oが反応するが、「芋売りのな」と言うと「ああ」と自分の仕事に戻った。
AAA「警察は、警察です」
一応、警察って意味か?
一応、警察って何じゃろう?
僕「うーん?普通に考えたら、焼き芋カーでパトロールしとる覆面焼き芋カー?公務員は副業禁止されとるし」
AAA「覆面焼き芋カーは初めて聞いたな」
僕「んん?でも、アイツ警察の事すごい嫌っとたぞ。警察もすごい詰め寄っとったし」
AAA「焼き芋カーを、何処がやってるのかが分かると分かります」
僕「知らん。JAとかじゃ無いんか?」
AAA「我々が言えるのは、此処迄です」
僕「おぉぉ」
当時は全く分からなかった。
今でも理解し難いが。
ヤクザの知識を警察が使うとかいう宮家考案のシステムである。
警察がヤクザに潜入では無く、ヤクザが警察に侵入。
その実、ヤクザもやってた宮家の警察乗っ取り計画だった。
AAA「ああ、それと、ジミー君がやらされてるって話をしてた時、ジミー君じゃない話をしたよね?アレは何で?」
ほー、アレ、気づかれたんか。
じゃが、笑いそうじゃったからとは言えんしの。
僕「ジミーの話にしたら、死ねばいいとしか言えんぞ」
と、誤魔化した。
じゃあ、次の話にと次の話に。
AAA「これが一番引っ掛かってるんだけど、警察殴った事あるって言ってたね。アレは?」
僕「ああ、犬にチョコレートあげようとしてた奴が居って、殴ったんじゃよ。もちろん、アレルギーで死ぬって知っとってあげとったんじゃ。そしたら、そこに警察が来たんじゃが、たかだが犬一匹って言われてキレて殴った」
警察官T「それ知ってます・・・」
警察官Tが、何やら弱々しい声で言ったので、AAAが反応した。
AAA「ちょっと知ってる情報教えて」
警察官T「いや、特には無いんですけど、その人、俺が警察官に成った時からお世話になってた先輩で」
AAA「ああ、それでそんな反応なのか・・・」
AAA「で、その犬は、君の飼ってた犬?」
僕「違う。近所の奴が飼ってた犬。儂が飼ってたのは猫じゃな」
AAA「他の人が飼ってた犬でキレたの?」
僕「それ関係ある?飼ってる奴らは皆キレるじゃろ?」
AAA「ああ、飼ってる人らは、皆キレるよ。自分の飼ってる動物は特にね」
BBB「そうなんですか?」
AAA「洒落にならないらしい。虫も殺さないような子でもキレるらしい」
その頃は、やっと動物愛護法の厳罰化が決まった頃である。
AAA「あっ、君、天皇陛下の犬がどうたらとかいう話した事ある?」
僕「それ、あの時の話じゃろう。この辺にたーくんっていう悪い奴が居るんじゃが。そいつが人の飼ってる猫を轢き殺したらしいんじゃよ。で、その飼い主が病院に連れて行ってくれって言ったら、生ゴミにでも捨てとけよって言われたらしくての。それで殴りかかったらしいんじゃが、勝てなかったんじゃと。それで儂の所に来てな。で、そいつの親居ったから、そいつの親の車の後ろに、たーくん紐で括り付けて公道引きずり回しとったんじゃが、警察に止められての。それでも儂の怒りが収まらんかったから、警察殴り倒して、パトカーと拳銃奪ってパトカーの後ろに手錠で繋いで引きずり回した時の話じゃな。その時の話を交番でしとる時に、それでキレるのは誰でも一緒じゃろって話になって、何で誰でも一緒じゃって分かるんじゃ?って聞かれたから、陛下にでも聞いてみろよ誰でも一緒じゃから、とは言ったぞ。」
警察官T「その時、パトカー奪われたの俺らです。すいません」
警察官Tが申し訳なさそうに、小声で口を挟んだ。
AAA「まあ、まあ、まあ、今はそれはいい」
電話の向こうで何人かが笑っている。
AAA「なんで天皇陛下?」
僕「陛下犬飼っとるじゃん。誰でも一緒じゃろ?」
AAA「あ、あ、あ、それで天皇陛下なのか」
僕「ん?陛下は違うん?」
AAA「いや、一緒」
AAA「それで君、この時たーくんになるのかな?拳銃で撃とうとしなかった?」
僕「ああ、したな。引き金引いたんじゃが、此処のお巡りさんにな、撃鉄の間に手挟まれて弾は出んかったんじゃ」
警察官Tは誇らしげに笑っている。
AAA「それ、結構痛い奴だぞ。そのお巡りさんに、お礼言うなり謝ったりはした?」
僕「しとらんし、するつもりも無い。本人にもそう言うとるが、それが良かったのか悪かったのかは、結果でしか分からん。」
AAA「君も言ってたけど、人は死んだら生き返らないよ」
僕「死ねば悪事も出来んじゃないか」
AAA「なるほど」
AAA「これ君だったのか」
BBB「知ってるんですか?」
AAA「この事件で、動物愛護法の厳罰化がアッサリ決まったんだよ」
僕「それは、ええ事じゃな」
AAA「まあ・・・結果オーライ」
AAA「それで君、そのたーくんって子が死んでたらどうしてたの?警察の立場から言うと後悔する事の方が多いんだけど」
僕「殺すつもりが無ければ引き金なんて引いとらんよ」
AAA「後悔は無いと」
僕「無いの。許しちゃあならん事ってのがあるじゃろ」
AAA「それが間違いだったら?」
僕「本当かどうかの確認は、たーくん本人に取っとるぞ」
AAA「ああ、そうなんだ」
警察官T「その後に、責任取る人間が必要だろって言って、自首っていうか、手錠かけるように両手揃えて出して来ましたよ」
AAA「へー」
僕「まあ、怒りに身を任せてやったのは事実じゃしの」
AAAは一呼吸置いた後、聞いてきた。
AAA「何度も同じような事聞くけど、君、人の事で自分が逮捕されるような事になっても後悔は無い?」
僕「無いの。見逃す方が後悔する」
AAA「なるほど」
AAAは「次の質問に」と次の質問に移った。
AAA「君その辺では有名な子なの?」
僕「ああ、有名じゃな。この辺でゆうくんと言えば儂になる」
AAA「なんで有名か分かる?」
僕「0歳の頃から言葉理解しとったからじゃな。もちろん喋れはせんが」
AAA「それは、なんで分かるん?」
僕「本人じゃから覚えとるよ。生後半年過ぎた頃に<うん>と<ううん>を教えてもらって、やっと意志の疎通が出来るようになったんじゃけどな」
AAA「普通は0歳の頃とか覚えてないんだけどね」
僕「幼児期健忘症じゃろ。儂、それ成っとらん」
AAA「成らないとかって有るん?」
僕「脳の成長に合わせて脳が肥大化するらしいが、その時シナプスが上手く繋がらんと記憶が残らんらしい」
AAA「おおぅ、君の場合は上手く繋がったと」
僕「そうみたいじゃな。1歳の時にCTスキャン取ったんじゃけど、脳のシワが成人男性ぐらいあったらしい。知能と脳のシワは関係ない論争を終わらしたのも儂になる」
それまでも頭良い人は沢山居ただろうが、CTスキャンの実用化がその頃の為、そう成ったというだけの話である。
AAA「申し訳ないんだけど、良く分からなくて。もっと分かる話あるかな?」
僕「警察が分かる話じゃとアレかのぅ。道で動物と一緒に寝とったら警察の人来とったのぅ」
AAA「道で?親御さんは?」
僕「起こしたりしようとすると、一緒に寝てる動物が怒るからって、日陰作る為にビーチパラソル持ち歩いとったぞ」
警察官T「俺、それ知ってる」
AAA「お前それ知ってるの?」
CCC「それ俺も聞いた事あるぞ」
電話の向こうで誰かが言った。
CCC「親がせっかく端の方に寄せたのにって、すごい怒ってて、こっちじゃ駄目なのかって言ったら、増えるからそっちじゃ駄目だって言われたんだって。そしたら、動物がどんどん増えてって、道路にはみ出して交通整理するハメになったとか」
DDD「動物と一緒に退ければいいんじゃないの?」
CCC「俺も同じ事言った。動物退けようとしても動物が怒るんだって。犬猫でも数が揃うと怖くって無理だったって」
DDD「数揃うと怖いぞ」
AAA「これ同じ話?」
警察官T「同じ話だと思います。いや、同じ話っていうか、話自体は別々ですけど。この辺で通報があった奴は、俺らが行きました」
警察官T「君、犬に乗って遊んだりする子だよね?」
僕「ああ、そうそう。それ儂じゃな」
AAA「なんで犬に乗るの?」
僕「皆同じ事言うのぅ。目の前を象が歩いとったら乗りたくなるじゃろ?」
AAA「なるほど。それ何歳ぐらいの話?」
僕「0歳じゃな。まだハイハイしとったから」
警察官T「そうです。そうです。娘と同い年ですから」
AAA「ハイハイしてたら0歳なの?」
僕「1歳と数日で歩けるように成ったからの。ハイハイしてる時は、ほぼ0歳」
AAA「う~ん。それなら有名になるかもしれんね」
BBB「ヤクザに入れ知恵されてるとかじゃ無さそうですね」
AAA「そうみたいな感じはするなぁ」
僕「この辺のヤクザの親分って、なんも出来ん奴じゃぞ」
AAA「君、そんな事言って大丈夫?」
僕「本人がそう言っとる」
AAA「君、親分って呼んでるの?」
僕「うん、ヤクザじゃから親分じゃろ?寿司屋は大将」
AAA「君、寿司屋とかも行くんだ」
僕「アトムボーイじゃな。回転寿司じゃ」
AAA「回転寿司?」
僕「知らない?」
AAA「知らない」
警察官T「府中のアソコに出来た奴だよね?」
僕「ああ、そうそう。庶民の寿司屋じゃ」
AAA「知ってんの?」
警察官T「ええ、知ってます。なんか評判が良いらしくて。行った事は無いんですけど」
僕「娘連れて行ってやれよ」
警察官T「いやー、寿司はなぁ」
僕「不味いと思っとるじゃろ?」
この頃、庶民の食べる寿司は不味く、皆、口を揃えて寿司は不味いと言っていた。
「国家成長戦略の一環として、庶民の食べる寿司をどうにかしてくれ」と、田中角栄に話をして出来たのが回転寿司である。
マリオの恰好で観光地で写真を撮るマリオヤジも、僕の経済政策である。
警察官T「美味いん?」
僕「ハマチがすごい美味い」
警察官T「うーん」
僕「高いと思っとるじゃろ?」
警察官T「まさか、安い?どんぐらい?」
僕「1人1500円ぐらいで行けるぞ。いっぱい食べる奴はどうか知らんが」
警察官T「え?そんなもん?」
警察官O「そんぐらいなら行ける」
僕「焼肉より安いから、おっちゃんでも、たぶん行けるぞ」
警察官T「ちょっと家内に言ってみるか」
僕「おっちゃんも親でも連れて行ってやると良い」
警察官O「言ってみる」
警察官T「俺も親も誘ってみるか」
僕「誘う前に家族で先に行った方がいいと思うけどな」
警察官T「なんで?」
僕「警察なら事実確認はせんといかんじゃろ!」
警察官T「ああ・・・。でも、美味いんだよね?」
僕「美味いぞ」
警察官T「じゃあ、別に・・・」
僕「というかじゃな。じいちゃんばあちゃんは結構疑り深いから、自分で一回行って見てから話した方がいいと思うぞ。まあ、時代の関係でな」
警察官T「ふーん、じゃあ、そうするか」
僕「おっちゃんは行った感想聞いてからにするか?警察官が言っとるって言ったら信じるじゃろうし」
警察官O「ああ、別にそれでも」
僕「ハマチとサーモンマヨとコーンをお勧めしとく。真ん中に大将居るから注文すると良い。バイトらしいが」
警察官T「それ、大将なん?」
僕「寿司屋やっとったけど、店が潰れてアソコでバイトしとるんじゃと」
警察官T「ああ、そうなん」
AAA「なんか、ただ呼んでるだけみたいだね」
BBB「そうみたいですね」
AAA「親分を尊敬してるとか有る?」
僕「どこを?」
AAA「ああ、そんな感じなんだ。入れ知恵されてるとか無さそうだね」
BBB「ですね」
僕「どっちかと言うと、儂の方が親分に入れ知恵しとる感じじゃぞ」
AAA「自覚はあるんだ」
僕「自覚はあるって言うか、電話とか掛かって来て、親に答えろって言われるんじゃ。それ、警察に言っても対応してくれんかったぞ」
AAA「ああ、それは申し訳なかった」
僕「それは、どうすればええん?」
AAA「今は、どうしてる感じなの?今はって言われても困るか・・・」
僕「今は親分の家に、プロパンガスからガス流し込んで、爆竹投げ込んだりしとる」
警察官T「やってます」
警察官O「やってます」
AAA「君、結構な事するね」
僕「こういうのは、どんどん過剰に成って行くんじゃよ」
AAA「ああ・・・、成るよ」
BBB「過程があるって事ね」
AAA「でも、それ大爆発起こす可能性あるよ」
僕「あそこはボロ屋じゃから、ガス抜けるんじゃよ。ボンベも逆止弁みたいなのが付いてて、ボンベの中までは引火せんようになっとるし」
BBB「え?そんなのあるの?」
AAA「付いたらしいんだよ」
BBB「あ、そうなんですか」
AAA「ソレ、分かってて、やってるって事だよね」
僕「まあ、そう」
警察T「結構な爆発してますけどね」
警察O「してます。してます」
僕「まあ、そう。何回か爆竹投げ込むんじゃけど、1回目の爆発で気絶して、次の爆発で起きる、次の爆発でまた気絶するの繰り返し」
AAA「親分が?」
僕「そう」
AAA「それ、結構爆発してない?」
警察官T「してます」
警察官O「してます」
僕「レスキューの人とかが怒ってて、もう助けないからなって親分が言われてて、それで今は落ち着いとる感じじゃな」
AAA「そう・・・」
僕「親分が窓の所で、下敷きか何かで爆竹弾き返そうとした所ぐらいじゃのぅ。面白かったのは」
警察官T「雑誌、雑誌」
僕「あっ、雑誌か。雑誌で爆竹弾き返そうとしても、ガスじゃから引火するんじゃよな」
BBB「どっちかと言うと、揉めてるみたいですね」
AAA「そうだろうな」
AAA「ああ、さっき、入れ知恵したって言ってたけど、入れ知恵した事で覚えてる事ある?」
僕「ああ、露骨なのはアレじゃな。嫌がらせをされたんじゃよ」
この時は、どんな嫌がらせをされたのか言ったはずだが、今は覚えていない。
僕「それで、またアイツかと思って、親分の所に殴り込みに行ったんじゃ。そしたら、自分じゃないって言われて。誰か聞いたら、それは言えないって言われて。お前、金貰ってんのか?って聞いたら、貰ってないって言うから、お前自分のシマで他所のヤクザに好き勝手やられとんのか?お前本当に何の役にも立たない奴じゃのう。二度とでかい顔するなよって言って帰ろうとしたんじゃ。そしたら、どうしたら良い?って聞いて来たから。ソイツ等が来る時に連絡は有るのか聞いたら有るって言うから、その時に金を取れって言って、最初は3万とかでもいいわ。で、ソイツ等が来るっていう度に値上げして行け。次に10万。次30万。次100万とかでいいわ。で、値上がりする理由聞かれたら時価ですって言えって言って、自分の身を守る為の入れ知恵はしたぞ」
AAA「君だったのか・・・。ソレ知ってるわ」
AAAは少し考えた後言った。
AAA「その話が悪用される可能性は考えた?」
僕「いや、考えてない。というか、何でも悪用しようと思えば出来るじゃん」
BBBはフォローするように、AAAに言った。
BBB「まあ、でも、他所のヤクザ使ってるって、相当やられてるって事ですからね」
AAA「そうだなぁ」
僕「ソレ、悪用されてるって事じゃよな?」
AAA「どういうのか分かる?」
僕「いや、分からん」
AAA「この辺はなぁ・・・」
僕「うーん?儂の話なら金取ったら何割かこっちに回せって言っとるから、やったら分かるはずじゃしのぅ」
AAA「あ、そうなん?」
僕「うん。割合は内容で決めるから、金取ったらまずこっちに連絡しろって言っとる。一応、防衛線は張っとるんじゃ」
AAAとBBBは何やら考えているようだ。
僕「あいつ、もしかして金全部取っとるんか?」
AAA「いや、はっきりした事は言えないんだけどね」
この話が終わった後、殴り込みに行ったが省略する。
AAA「まあ、こんな感じならヤクザ殴ってどうしてるのかって話が出た時に笑いが起きるのも、納得かな」
BBB「そうですね」
僕「ああ、アレはの。一発でKOすると記憶が飛ぶらしいんじゃが。まあ、正確には二発なんじゃが」
警察官T「え?俺らの時は一発って聞いてるよ?」
AAA「え?お前らもKOされてるの?」
警察官O「あったけなぁ・・・?」
警察官T「あの、パトカー盗られた時に」
警察官O「ああ、ありました。良く覚えては無いんですけど」
警察官T「俺も良くは覚えて無いけど、見てた人が一発で一瞬だったって言ってましたから」
僕「あの時は、たーくんの紐外そうとして、しゃがんどたから一発じゃな。普段は腹に一発入れた後に、顔に一発。先に腹に一発いれて前屈みにさせんと手がたわんのじゃ」
AAA「なるほど。なるほど」
僕「で、KOした後に、酒の空き缶とか瓶とか拾って来て、周りに置くんじゃ」
AAA「KOしたヤクザのね」
僕「あ、そうそう。で、新しいのを1つ買って、口に塗ったり服にかけたりするんじゃよ。そうすると、起きた時に酒飲んで寝てたのかって思うんじゃ」
AAA「偽装してるのか」
僕「それで、たまにチクる奴が居って、交番に呼ばれて話するんじゃが、おまえがやったのを見た奴がいるとか色々言われるんじゃが、それじゃとお前小学生にやられた事になるぞって言うと、酔ってたのかなぁ~って皆言うんじゃ」
AAA「それで笑ってた訳ね」
僕「まあ、アレじゃよ、コイツラは舐めとるとか舐められとるとか言うとるが、儂らはそんなのどうでも良くてじゃな。穏便に済ませられればそれで良いんじゃ。できるだけ穏便に済ませとるつもりじゃよ」
AAA「うん、うん、そうだね」
BBB「そうだね」
AAA「まあ、このぐらいかな?」
BBB「そうですね。気になる所はだいたい聞けたかと」
AAA「では、これで終わりとしますが、最後に、隠し事や嘘を付いてる事はありませんか?」
少しの間沈黙が続いた後、僕は言った。
僕「嘘はついて無い」
AAA「というと・・・。隠し事は・・・?」
僕「ある」
AAA「それは何?」
僕「今は言うつもりは無い」
AAA「今は・・・?」
僕「今はじゃな」
AAA「それは後から言う事もあると」
僕「そういう事じゃな」
AAA「それは何で?」
僕「儂の中で言うべきか言わないべきかの判断が付いて無い」
AAA「なるほど。その判断はどうすれば付くとか有りますか?」
僕「今は無理じゃ。儂はお前らを其処まで信用しとる訳じゃない」
AAA「私共が何かをした感じでしょうか?」
僕「違う。あっちも警察、こっちも警察で状況が分からん上に、誰を信用して良いのかも分からん」
AAA「ああ、でも、それは本当の事です」
僕「ふむ、これ、仏の山さんとかじゃないんか?」
AAA「仏の山さん?」
僕「誰かが激しく追い込んだ後、別の誰かが優しくして、人を懐柔する手法じゃな。刑事ドラマでも良くやっとる」
AAA「ああ、ああ、ドラマで山さんって人がやってるのね。で、我々が山さんと」
僕「じゃな。グルなら色々話が変わってくる」
AAA「あっ・・・そういう事・・・。そう思ってるならそうだよね」
AAA「あ、ちょっと、さっき最後って言ったけど、もうちょっと話聞かせてもらって良いかな?」
僕「いいとも~~~って、そういう雰囲気でも無いか」
AAA「そうだね」
AAA「で、我々は、同じ警察ではあるんですが、さっきの人達とは違う部署の人間です」
僕「部署?部署ってあの左遷とかで飛ばされる所?」
AAA「うーん、そういうのも有るけど、違う仕事をしてる所かな」
僕「部隊みたいな認識でええ?特殊部隊とか」
AAA「ああ、そうだね。そんな感じです」
AAA「で、さっき話してた2人も違う部署です。ジミー君のお父さんともう1人の人」
僕「IQ130の奴な」
AAA「ああ、そう、その人」
僕「でも、アイツらはグルじゃろ」
AAA「え、なんでそう思うの?」
僕「同じ考えを共有しとるよのぅ。話の最終地点?なんて言うんじゃろ?話の結果?辿り着く先が同じ所にしか思えん」
AAA「でも、あの2人言い合いとかしてたよね」
僕「言い合いとかしててもじゃな」
AAA「どの辺でそう思いましたか?」
僕「決定的なのは、正しいのは法だけみたいに思っとる所じゃな」
AAA「警察官なら不思議ではないのでは?」
僕「普通は、法に基づいて行動するとは思っとるじゃろうが、法が絶対的に正しいみたいには思っとらんと思うぞ。まず、見なければならないのは人じゃしな」
AAA「ふむ」
僕「まず、人を見た上で法に照らし合わせて判断するってのが普通じゃと思うぞ」
警察官T「俺もそう思ってる」
僕「人を殺しても、殺さなければどうにもならない時もあるしな」
AAA「そういった場合は、不起訴処分とかもあるけどね」
僕「不起訴処分って何?」
AAA「簡単に言うと罪を犯しても逮捕されない事。君が逮捕されてないのはソレ」
僕「ああ、そんなのがあるんか」
AAA「逮捕されないの不思議に思わなかった?」
僕「ああ、まあ、悪い事した訳じゃないからええのかと思っとった」
AAA「まあ、まあ、まあ、そういう事ではあるよ」
僕「そういう事なら法が正しいというのも分かる気がするの」
AAA「まあ、君の言ってた話でいいけどね」
僕「まあ、判断するのは人じゃしな」
AAA「そうだね」
僕「でもコレ、あんまり人に言わん方がええかもしれんの」
AAA「なんで?」
僕「勘違いしたり過剰に成ったりする奴が出そうじゃからの。お巡りさんとか大変になるぞ」
AAA「君はそう成ったりする?」
僕「儂は変わらんと思うぞ」
AAA「そうだよね。君、逮捕される覚悟でやってるもんね」
当時の僕は、こういう考えで「なぜ?人を殺しても逮捕されないのか?」の問いに「不起訴処分」と答える事は無かった。
そういう事を聞いてくる奴は、大抵ロクでもない奴だからだ。
それは今日までに至っているが、此処にて公開する。
法律云々で、不当な目に遭っている人間の方が多いと思うからだ。
一応書いておくが、この頃はまだ人を殺した事も無く、この先も自分のやった事を隠したりした事は無い。
ヤクザをやってた頃は、公民館のスピーカーを使って、自分の考えや行った事を、町民に公開したりしていた。
もちろん、殺しを行った事についてもである。
僕「まあ、逮捕される覚悟っていうか、逮捕とか気にした事が無い。自分が許せるか許せないかだけで」
AAA「なるほど」
AAA「まあ、さっきの人達の話に戻るけど、自分なりに考えた結果、そういう考えになったっていうだけでグルとかでは無いと思うよ」
僕「とてもそうは思えんのじゃが?」
AAA「なんで、そう思うの?」
僕「根本的な部分がクズじゃん」
AAA「クズ?人間性って意味?」
僕「そう。アレ2人共クズじゃよな。とても、まともな人間の発想とは思えん。少なくとも警察官の発想じゃない」
AAA「でも、考えられてるとは思ったよ」
僕「クズの発想は、何処まで行ってもクズの発想じゃぞ。物事がまともに動く事なんて無い」
AAA「そう言い切れる理由は何?」
僕「いや、そもそもな、全部救うなんて無理なんじゃよ。アイツら自身が、どっちかと言うとまともな人間の方を見捨てるって言うとるじゃないか」
AAA「言ってるね」
話の途中で申し訳ないが、この辺の記憶が良く思い出せない。
交番には何度か呼び出されてるので、この日の話か別の日の話かも良く思い出せないが、記憶の断片だけ置いて省略する。
話が困惑しそうなので、記憶の断片は読み飛ばして頂いて構わない。
------------------記憶の断片 開始ーーーーーーーーーーーーーーーーー
AAA「ちょっと落ち着いて。極論に成ってる」
僕「極論じゃない。」
僕「結局、話をせずに殴るのが一番正しいんじゃん。さっきの奴らが話をしろって言って来たのもコレが目的じゃろ」
AAA「一概にそうとは言えないけどね」
BBB「そうそう」
僕「学校でも先生に、話し合いしろ話し合いしろ言われておかしいと思っとったけど、やっぱそうなんじゃよな?」
AAA「先生にも言われてるの?」
僕「校長じゃよ。校長。校長にやらされとるんじゃ。」
AAA「なんで校長先生って分かるの?」
僕「いっつも、話し合いは先生らでやって、儂は殴るっ言っとるんじゃけど。それは、大人が話し合いで解決出来ないのに、子供に出来る訳ないんじゃから当然の話なんじゃよ。で、先生が、先生にも出来ないって言ったから、じゃあ、ソレを言っとる奴に見本を見してもらえばいいって言ったんじゃ。そしたら校長が来た。で、いきなり殴りかかられても話し合いしろって言うから、じゃあお前やってみろって殴ったの。そしたら、出来る訳ないじゃないか!ってキレる、頭おかしい校長が居るんじゃ」
AAA「君、校長先生殴ったの?」
僕「相手が誰かとか関係ある?悪は悪じゃろ」
AAA「そうだよね。君ヤクザでも殴るんだもんね」
僕「針金1本でも、人の家の鍵開けるのに使うって悪用できるのに。作る側はそんな事考えて作っとる訳じゃないぞ」
AAA「それはそう」
BBB「まあまあ」
ウスイ「お前には分からん」
僕「分からんから聞いとるんじゃが?」
ウスイ「説明できん」
僕「説明できんと言うのは、お前が理解出来てない。言えない。どっちじゃ?」
ウスイ「説明できん」
僕「説明できん理由を聞いとるんじゃが?」
ウスイ「それは説明しないと駄目なのか?」
僕「税金から出とる金で働いとるお前が、市民に対して説明出来ない理由を説明して」
ウスイ「俺が理解出来てないから説明できない」
僕「お前の仲間じゃよ」
僕「人に優しくされるとうれしいじゃろ?」
僕「お前損得でやっとるよな。それじゃあ上手く行くはずもない」
ーーーーーーーーーーーーーーー記憶の断片 終了ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
話は終わり、交番を出てから親分の所へ殴り込みに行った。
この話の後、2週間ぐらいジミーが度々余計な事をして対応してた。
あんな話をした後なのに・・・。
何を考えてるんだコイツら?
コイツらとの話し合いとか本当に無駄じゃな。
そう思ってた矢先に、日曜日にまた親から「ジミーの所へ行ってくれ」と言われた。
ジミーの家付近に着くと、ジミーがこちらを確認しジミーの家へと入って行った。
「本当にダルイの」と思いながらもジミーの家へ入って行った。
入って行く途中に後ろから女の子の声が聞こえた。
女の子「入って行ったよ」
この前も居たこの辺に住む1個下の女の子の声だった。
「また、待機しとんのかコイツラ・・・」と思いながらジミーの家へと入った。
家の中に入ると、ジミーが居たが・・・。
ん?
ジミー?
なんか顔が違うような・・・。
居間で、ジミーとジミーの母親と何か話をしたが良く覚えていない。
確か、1回ジミー殴ったら、ジミーが家飛び出して逃げたはず。
ジミーが逃げ出した後、ジミーの母親に顔が違うような気がすると確認したが、ジミーで合ってると回答が来た。
確認後、追いかけて何回か殴っといた。
この頃は、もうコイツの相手をするのが面倒くさかった。
今、考えると、こいつたぶん大ちゃんって奴だったんじゃないかと思う。
その翌週ぐらいに、ジミーは転校して行った。
第6話 その後をざっくり
その後、僕は数か月程ヤクザの組長「さくら組二代目」をやる事になるが、その間にジミーが一度転校して戻って来ている。
ウチの組にスパイとして潜り込ませようとして失敗したので、またすぐ何処かへ転校して行ったが・・・。
なんで、そんな話になったかと言うと、山口組本部にウスイケンジ警視正が居たからだ。
僕の前では山口組組長を名乗っていた。
もちろん、権力者の兼任は違法である。
本人は、警察に自分そっくりな奴が居ると言っていたが、僕が頬に付けた傷が両者にあるのを確認している。
それと、ヤクザをやってた時に、この話に出てくるIQ130の奴は殺してる。
本人が「IQ130ある俺がこんな所で・・・」と言っていたので、たぶんコイツである。
ヤクザ時代の話は、機会があれば書く事とする。
僕がヤクザの組長をやってたのを潰された理由は、1985年頃ニュースを観てた人間は知っている通り、史上最年少警視総監を名乗る人間が、警察幹部が全員反対しているのを、自分1人で押し切れば自分が偉そうに出来るという理由である。
ここだけは、知っておいてもらいたい。
この頃、数週間程、暴走族「わくわく動物団」の頭をする事になり「狼」と名乗るが省略する。
その後も警察には度々呼び出された。
当時は、治安の維持もやってる、経済発展もやってる僕がなぜ組長の座を潰されたのか分からなかった。
が、警察から弱者を救う方法を聞いた時に、「コイツラの目的は治安の維持じゃないな」と気付いた。
警察は「誰にでも出来る。簡単な方法だ」としか言わなかった。
それを聞いた時点で、僕は反対をした。
そういう方法は、制御が出来なくなるからである。
最後まで反対をしたが、警察は決行する事にしたと言った。
蓋を開けてみれば「騙して嵌める」である。
今の社会がこうなったのも、コイツラが原因である。
その後も、自分の周りの歪みに気づいて何回か話し合いをしたが、全く意味が無かった。
ブチ切れて広島県警本部に殴り込みに行き、広島県警本部を爆破する事となる。
その後、TVの番組をジャックし、警察キャリア制度廃止を訴える事となる。
その時に、警察から「警察を辞めたらヤクザをやるしか無くなる」と言われた。
「なんで、そんな人間が警察やっとんじゃ?」と言ったが、後に、警察に入り込んでる宮家の連中の事だと分かる。
この頃、国会議事堂にも殴り込みに行き国政を1週間程する事になるが、機会があれば書く事とする。
TV番組ジャックしてる時に、腹に刺し傷がある女が何処かに捕まってる話をした。
そいつらの子供を産みたくないと、その女は自分で腹を刺したのである。
その話をした後、遺体で見つかるが、その女と一緒にいた男を山口本部で見た事があった為、山口組本部の犯行と言ったが、それが合ってたかどうか分からない。
後に知るが、その見た男というのは、宮家から潜入している男であり、スペアである男だったからだ。
この頃には、精神的に相当追い込まれていて、そこへ更にこんな追い打ちを掛けられ精神的に耐え切れずに、「山口組の犯行だ」と発言をした後、気絶している。
気絶した後、幼児退行しており、ここで多重人格障害者と成った。
記憶がおかしくなり、覚えてる時は過去の記憶を全部覚えてる。
覚えて無い時は、過去の記憶を全然覚えていないという症状が発生する。
自分でも良く分からない状況で、これが二重人格障害だと分かったのは、20代後半に成ってからである。
小5・6年生時に、小学校に三番長制をひき「やる気ない番長」をやったが省略する。
第7話 ジミー再び
時は進んで、中学2年生になり学級委員をやる事に成った。
と言っても、学級委員に成ってた事を知ったのは2学期に入ってからである。
それ迄は、同じ学級委員の女生徒F原が1人でやってたらしい。
生徒会に行くと、「今まで何やってた」とか聞かれた。
「この生徒会長やけに絡んでくるのぅ」と思ったらジミーだった。
生徒会が始まったが、あまりにも無駄な時間だなと感じた。
部活優先である事と配られたプリント1枚貰って帰ってくれば、後は僕がやる事をF原に伝えた。
生徒会のメンバーは驚いたようだが、「重要事項は書いてあるんだから、後は自分の知識と経験を肉付けして話すだけだろ」と言ったが、中学生にはまだ難しいらしい。
実際にF原がプリント1枚を持ち帰りクラスで説明させられたが、苦労はしなかった。
隣のクラスの学級委員が、聞こえてくる僕の説明を聞いて追加で説明をしていたが、途中からクラス全員で僕の説明を聞くように変更したようだ。
また、生徒会に呼び出され「俺らは納得してないから説明して見せろ」と1年生の林間学校のプリントを渡された。
普通に説明したが、1年生の学級委員達がクラスで説明した時に、分かり易い面白いと好評だったようだ。
この時に、林間学校の食事が、夜から次の日の朝まで時間が空きすぎて、体調崩す人間がいる事に気づき修正している。
当時は、夜の食事が18時で、朝が8時だったかな?
ちょっと正確には覚えていない。
そのタイミングで食べれなかった人には作り置きを置くか、それか何か簡易に食べられる物を持ち込むか、何らかの形で対応が行われてるはず。
直接、僕がその話を教員にしたが、ジミーは「俺が話をする。俺が話をする」と喚いていた。
自分の手柄にしたかったようだ。
教員には、この学校だけの問題じゃないので、教育委員会に上げるように促した。
結局、教育委員会とも僕が話をした。
「なんで、生徒が教育委員会と?」と思うかも知れないが、僕は小学生の頃から普通に話をしている。
ちょうどこの頃だと、体育会系の部活に基礎トレーニングマニュアルを配るように文部省に上げたりしている。
これは、同じクラスの女生徒N田が、怪我をしているのに気づいたからだ。
中学生の部活だと、部活に合わせた教員の確保が難しい。
身体づくりをちゃんと行わずに、スポーツを一生懸命やると怪我が増えるのである。
スポーツの知識の無い教員だと、「スポーツに怪我は付き物」だと思ってしまう。
ここに誰も気づかずに、頑張れば頑張る程、怪我をする子供が増えるという悪循環が生じていた。
これは、ニュースにも成った話なので知ってる人間も多いと思う。
当時の文部大臣が僕の言った事をそのままニュースで言っていた。
話を本題に戻して、納得させる事に成功し、部活優先で「重要な話がある時だけ呼んでくれ」と成った。
同じクラスで学級委員をやっている女生徒F原が言った。
F原「あんた、それでいいん?」
僕「ええよ?重要な事はその紙に書いてるじゃろ」
配られるプリントを見ながらそう言った。
ジミー「書いてない場合もあるけどな」
僕「はあ?重要な話を漏らさないように作ってるのが、この紙じゃろ。その程度の事も出来んのかコイツ」
生徒会副会長が、ジミーを見ながら
副会長「そうよ」
と言った。
僕「ハァ・・・。生徒会ってこんなに無能なんか・・・」
ジミー「いや、ちゃんと書いてある」
僕は、ジミーを見ながら大きく溜息をついた。
ジミーに背を向けて、自分のクラスへ帰ろうとする僕に、F原が声を掛けた。
F原「あんたいいの?」
僕「何が?」
F原「いや・・・」
F原は何か言いたげだったが、
僕「この紙は毎年使っとる物の使い回しじゃからの。コピーするだけでアイツが作っとる訳じゃないけえ大丈夫じゃろ」
F原は、何かを考えているようだった。
後日、生徒会に呼ばれた。
体育祭で「何か新しい事をやりたいから呼んだ」との事だった。
僕「予算は?」
ジミー「いや、まず予算とかじゃなく、どんな事やってみたいとかあったら言ってほしい」
僕「は?予算が分からずに、どんな事も糞もない」
ジミー「だから、予算とか関係なしにって言ってるだろ」
僕「じゃあ、宇宙旅行」
ジミー「出来る訳ないだろ」
僕「予算は?」
ジミー「話にならない」
僕「じゃあ、帰るわ」
僕は生徒会室を出ようとしたが、F原に引き留められた。
F原「ちょっと待ちんさい」
僕「何?」
F原「あんた、ちょっとは話しんさいや」
僕「ちょっとは話したぞ?」
F原「いや、まあ、そうかもしれんけど」
僕「おまえな。予算の話無しに話するとかアホのする事じゃぞ。付き合いきれん」
F原「いや、あたしはそういの良く分からんけど」
廊下の奥、階段の方から教師がこちらに向かって大きな声で言った。
K下「生徒会長、予算ちゃんと出せ」
日体大卒体育教師K下である。
副会長から予算の書いた紙が僕に回されて来た。
僕は、席に戻り紙を見た。
僕「おまえ、これ、数千円しか無いじゃないか。これじゃ棒キレ1本とかしか買えんぞ。これで何するって話じゃ?」
階段の方にいた教師が雪崩れ込んで来た。
K下「ちょっと待て。待て」
K下は、僕の見ていた紙を取ると
K下「なんで、こんだけしか無いんや?」
と言った。
K下は、ジミーの方を向き
K下「おまえ、何に使ったんや?」
と言ったが、ジミーはそっぽを向いて答えなかった。
K下「おまえ、ちょっと話がある。ちょっと今日はもう終わり」
K下は、今日の生徒会の終りを告げた。
僕は席を立ちながら
僕「業務上横領罪」
と言った。
K下「いや・・・、まあ・・・、そこまでは・・・。」
僕「のぅ。なんで、こんな奴が生徒会長やっとるんじゃ?」
K下「生徒会長とかやらすと改心した例があるんだよ」
僕「また、おまえの何%成功したか分からん話か」
K下「何%かは分からん。重要か?」
僕「まあ、この話は何%というより、人によるの。ジミーじゃ周りが迷惑なだけじゃわ」
K下「おまえもちょっと協力してくれ」
僕「ジミーの更生?」
K下「そう」
僕「断る!」
K下「おまえ、自分にも関係ある話なんだから」
僕「それは、おまえらがコイツを生徒会長にしたからじゃろ。おまえらが責任を持ってやれ」
K下「おまえならどうする?」
僕「銃殺刑」
K下「・・・」
僕「コイツの存在なんて社会にとって全くプラス無いんじゃから、ささっと檻の中に入れとけよ」
K下「社会に取ってプラスが無ければ見捨てるんか?」
僕「訂正する。社会にとってマイナスしか無いから檻の中に入れとけよ」
K下「まあ、俺らはそういう訳にはいかんからな」
僕「じゃあ、自分達でちゃんとやれよ」
K下「何で、おまえにそんなに偉そうに言われないといけないんだよっ!」
僕「おまえらが、儂に擦り付けようとしとるからじゃろ」
K下「あぁあぁ・・・。でも、ちょっとは協力してくれよ」
僕「嫌じゃ。生徒を教育するのは誰の仕事か言って見ろ」
K下「それは教師の仕事だぞ」
僕「はい。じゃあ、ちゃんとやるように」
K下「おまえもちょっと問題あるぞ」
僕「儂に問題など無い。本来、生徒会長とは模範となる生徒がやるべきであって、そこを歪めたのはお前らじゃろ。この話における責任の全てはお前らにある。以上」
僕「何に金使ったのか分かったら教えてくれ」
と生徒会室を後にした。
後日、ジミーの教室に呼び出されるが、お菓子を買って食べていたらしい。
副会長が「生徒会予算使ったレシートは、全部この箱の中に入れておけ」と言われてたので、お菓子買ったレシートが全部入っていたらしい。
金額は覚えてないが、数万円。
約半年の間、お菓子を食いまくって、生徒会予算を文字通り食い潰していたようだ。
そのお金は、副会長が弁償した。
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